T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報を発信しています。金融関係の仕事をしながら官報合格済み。その他キャリアや英語学習の情報も発信しています。

ここが変だよ税理士試験(計算問題編)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報をお伝えします。

 

今回は私が思う税理士試験の問題点についてのお話です。前回は試験全般について書きましたので、今回は計算問題について書きたいと思います。

 

1. 試験時間

税理士試験の計算問題は時間に比して問題量が多いと思います。前回も書きましたが見直しする時間がないほどのスピードを要求することに何の意味があるのか私には全く理解できません。

落ち着いて処理を考え、見直しをしたり途中で間違えに気づいたら修正したりできる十分な試験時間を確保すべきです。

計算は一般的に60-70分が標準的な解答時間となっていますが、今の計算問題の分量であれば90-120分の時間を受験生に与えるべきだと思います。

 

2. 問題の取捨選択

税理士試験の計算は試験時間がないこともあり問題の取捨選択が合否に大きな影響があります。問題の難易度を素早く判断し、難しい問題は解答せずに簡単な問題を確実に正解する必要があります。

簡単な問題は正解しなければならないのは当然ですが、難しい問題に取り組まないことが合格のための近道というのが資格試験として適切でしょうか?

実務では難しい課題があったとしても法令や通達をしらべて根拠を持って一定の結論を出さなければなりません。専門家として難しいから分かりませんと言うことはできません。

難しい問題を避けるのが合格のための正しい戦略であるという試験は、資格試験としては適切ではないと思います。判断が難しかったとしても根拠を書いて一定の結論を出し、根拠の記載を踏まえた採点が資格試験として適切な問題・採点方法であると思います。

税理士試験に限らず、問題の取捨選択で合否が決まる資格試験は不適切と思います。

 

3. 集計

こちらも試験時間が足りないことと関連しますが、課税標準額の計算など時間ばかりかかる集計作業は試験に不要と思います。実務であれば検算をしたりPCを用いたりして正確な集計をします。単純な足し算や引き算を見直す時間もなく電卓での手計算で解答させることに何の意味があるのか私には全く理解できません。

特に、相続税の各相続人の課税価格と相続税額は、相続人が5,6人も出てきて集計するだけで相当の時間を要します。集計をしなくても合格した人もいるようで解答欄があるにもかかわらず集計すべきか受験生を迷わせる非常に悪質な問題と思います。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

ここが変だよ税理士試験(試験全般編)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報をお伝えします。

 

今回は私が思う税理士試験の問題点についてのお話です。まずは試験全般の問題点について書きたいと思います。

 

1. 難易度と相対評価

私は、税理士試験は相対評価で合格率も低く難しすぎると思います。これは、税理士試験だけでなく会計士試験や司法試験などの難関資格一般に同様の傾向であると思います。

 

専門家として必要な能力は私が思いつくだけでも以下のようなものがあります。

  • 専門知識
  • 顧客ニーズの把握
  • 説明・プレゼンテーション能力
  • コミュニケーション力
  • 交渉力
  • 営業力

試験で測ることができるのは「専門知識」のみで、専門家として必要な能力のごく一部です。「試験ができる」=「専門家として有能」ではありませんし、「試験ができる」=「専門知識がある」とも必ずしも言えません。

私は、税理士試験は有資格者として最低限の専門知識を有しているかを確認するための絶対評価とすべきと思います。

 

司法試験や会計士試験は働きながら試験に合格するのは困難です。学生時代に受験を開始するか、仕事を辞めて勉強に専念しなければ合格が難しいです。税理士試験は働きながら合格することは可能ですが、働きながらであれば最速で4年、一般的に8年程度はかかっています。働きながら試験に合格するのは可能とはいえかなり難しいです。

 

試験の合格者を増やすと有資格者のレベルが下がるという意見もありますが、現在の試験制度は、能力や経験値が高くても社会人経験者が試験に挑戦すること自体が難しく、むしろ有資格者のレベルを下げていると思います。既資格者が競争を避け既得権を守るために参入障壁を高くしているとしか私には考えられません。

 

私は、税理士試験を絶対評価とし、社会人が働きながら2-3年で取得できる難易度とすべきと思います。試験勉強にばかり時間をかけるのではなく、専門家としての研鑽に十分な時間を充てられるようにすべきです。

 

2. 地方税は試験科目に不要

税理士試験の受験科目から地方税(住民税、事業税、固定資産税)は外すべきです。地方税はそもそも分量が少なく、賦課課税方式の税であるため税額計算や手続のバリエーションも乏しく、相対試験の科目として差がつくような問題を作成することが難しく

試験科目に不向きです。理論は速記試験となり、計算はワンミスするかどうかの勝負となります。このようにわずかな差で合否を分けることに何の意味があるのか私には分かりません。

 

3. 試験の分量と制限時間

税理士試験は1科目2時間と決まっています。試験の分量は多く、見直しの時間が取れる科目は財務諸表論と国税徴収法ぐらいかと思います。その他の科目は、理論は速記試験となり綺麗な字を書く余裕はなく、計算も問題の取捨選択をしつつ何とか解答欄が埋まるかどうかです。(相続税の計算の解答欄は埋まらないと思います。)見直す時間はほとんどありませんし、途中で間違いに気づいても書き直す時間がありません。スピード勝負でかつ1回で正解を導き出さなければなりません。

実務でも期限はあるのでスピードも大切ですが、やり直しや確認の時間が全く取れないということはありません。落ち着いて対応し、見直しをして正確な仕事をすることの方が重要です。試験でここまで瞬発的なスピードを求める必要があるのか私には理解できません。

私は、今の試験の分量なら試験時間は1科目3時間にすべきと思います。

 

4. 採点基準と模範解答の公表

税理士試験では出題のポイントは公表されていますが、科目や年によって記載の粒度が異なり、有益なものもあればほとんど内容がないものもあります。模範解答も採点基準も公表されていません。また、自分の答案について開示請求をしても黒塗りでどのように採点されたかは開示されないようです。

このように、税理士試験の採点は非常に不透明で公平な採点がされているか不明です。民間資格なら主催団体が勝手にすればいいと思いますが、税理士試験は国家資格の試験であり透明性が求められると思います。

私は、模範解答と採点基準は公表すべきと思います。

 

5. 合格発表までの期間

税理士試験は合格発表まで約4カ月もかかっています。5科目を受験する公認会計士の論文試験で3カ月、8科目の司法試験の論文式試験で4カ月となっています。記述式の国立大学の2次試験も2週間程度で合格発表があります。税理士試験は1科目ずつ合否を判定するものであるにもかかわらず、これらの試験と比べ非常に時間がかかっています。予備校の模擬試験であれば1-2週間で採点が終わります。

税理士試験がどのような体制で採点されているのか分かりませんが、採点のための十分な人員が確保や採点基準の明確化がされていないのではないか思います。

税理士試験は科目合格制をとっており、合否の結果は次の科目の学習に大きく影響してきます。合否の結果が予想通りであればいいのですが、予想に反して合格又は不合格となっていた場合には、4か月間の学習科目の選択の誤りにより無駄な時間や予備校の費用を費やすことになりかねません。合格発表までの期間が長いことは、人によっては1~2年受験期間が延びるほどの影響があると思います。合格発表が遅いことは受験生にとっては大きな負担です。私は、試験から合格発表まで2カ月ぐらいにすべきと思います。採点のための人員の確保や採点基準を事前に明確にしておくなどの対応をすれば十分に可能と思います。

 

計算問題や理論問題の問題点については、今後書きたいと思います。

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

税理士試験は絶対評価!?

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報をお伝えします。

 

今回は税理士試験を絶対評価と思って勉強した方がいいというお話です。

 

税理士試験は60点以上が合格と定められているものの、合格率が12%程度になるように点数が調整され相対評価の試験となっています。会計士試験や大学入試なども相対評価の試験です。税理士試験などとは異なり日商簿記2級・3級は70点で合格できる絶対評価の試験となっています。

 

税理士試験では大手予備校の答練で上位3割に入っていることが合格のために必要とされており、自分の順位が気になる受験生が多いと思います。

 

税理士試験の学習の過程で順位は本当に重要なのでしょうか?

私は答練の順位を気にする必要はないと思います。以下を前提とすると、合格レベルは概ね毎年一定しています。

・問題のレベルが毎年概ね一定していること

・合格者数も受験者数も多いこと(母集団が大きいこと)

大学受験とも共通しますが、税理士試験は問題のレベルや傾向が一定しています。受験者数が多ければ得点の分布も正規分布に近似し、上位10%の得点(=合格レベル)もおおよそ一定しています。

 

税理士試験は、1-3人程度しか選出されないオリンピックの代表選考などと異なり、100人単位で合格者が出ます。受験者数(すなわち合格者数)が多い科目であれば、何人か優秀者がいたとしても合格ラインにはほぼ影響がありません。科目選択において私が受験者数の多い科目をお勧めするのは、このように運の要素が少なく合格レベルが明確となりやすい点にあります。マラソン大会で順位を目標にするのではなく、タイムを目標に練習を積んだ結果として目標の順位をクリアしているとうイメージで、税理士試験の学習も自分が合格レベルに達することのみに集中すべきです。

 

答練の受け方でも記載した通り、答練の順位は気にする必要はありません。予備校は長年のデータの蓄積から合格者が正答できる問題と合格者でも正答が難しい問題を把握しています。予備校の解答解説を参考に、初見で正解すべき問題を確実に得点できたかどうか、2回目以降では満点がとれたかどうかを気にすべきです。答練は解答を提出しない通信生も多く、順位や上位何%の得点といったデータは当てになりません。

ただし、公開模試については受験者数が多く、問題の形式やレベルも本番に近いため順位や判定はかなり正確と思います。公開模試については別の機会に書きたいと思います。

 

受験生の方は周りを気にせずに、合格レベルに達することに集中しましょう。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

税理士試験の科目別学習ポイント(事業税編)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報をお伝えします。

 

今回は事業税の学習のポイントについてのお話です。

 

1. 試験の概要

(1) 問題構成

事業税は第71回(2021年)と第70回(2020年)は大問二問で理論50点、計算50点でした。第69回(2019年)は大問三問で理論55点、計算45点でした。以前は、理論70点、計算30点でした。近年は計算問題が2題構成になり、計算問題の配点が上っているようです。

 

2. 難易度

(1) 学習量の比較

法人税消費税相続税国税徴収法と同様に予備校の標準学習時間と理論の題数で比較してみます。

 

予備校の標準学習時間と比較すると以下の通りとなっています。

簿記論・財務諸表論:450時間

法人税所得税:600時間

相続税:450時間

消費税:350時間

国政徴収法:150時間

事業税:200時間

 

理論の題数で比較すると以下の通りです。年や予備校によって題数が変わりますのでおおよその目安です。理論の題数の方が科目ごとのボリュームが分かり易いと思います。

法人税:125題

相続税:65題

消費税:40題

国税徴収法:45題

事業税:35題

 

予備校の標準学習時間には理論の暗記時間は含まれていません。事業税の勉強量は消費税の4割、法人税所得税の2割程度ではないかと思います。

 

(2) 合格率

合格率は11-14%程度で他の科目と同レベルです。

 

(3) 受験者数と受験者のレベル

事業税は住民税、酒税法とともに最も受験生が少ない科目の一つです。過去8年で4回、受験者数が最も少ない科目でした。合格者数は40-90人程度と非常に少ないです。1都道府県で1~2人の合格者しかいません。

事業税は法人税学習者が多く受験生のレベルは高いと思います。

 

3. 合格への戦略

(1) 理論問題の傾向と対策

事業税の理論問題は、べた書きと事例問題が出題されます。事例問題もあてはめや柱挙げ自体は容易で実質べた書きの理論となっています。

事業税の理論は計算と関連するものも多く覚え易い方だと思います。合格のためには全ての理論を暗記する必要がありますが、題数も少なく全ての暗記することも十分可能です。

本番の試験では解答の柱は分かり、書くべき理論も暗記していても、書き終える時間がなく速記試験となります。時間内に完答するには理論を省略して解答しなければなりません。理論マスター/ドクターは法令を省略したものですが、そこからさらにどの程度省略しても合格できるのかは誰も分かりません。予備校の模範解答を全部書き終える時間はありません。答練でどの程度省略可能かを習得するのは困難です。

この点が事業税の理論の難しい点だと思います。

 

(2) 計算問題の傾向と対策

以前は計算問題は1題で配点は30点でしたが、近年では計算問題が2題となり配点が50点に上っているようです。計算問題が1題の時は合格者数の少なさからも合格のためには満点が必要でした。近年は計算問題の量が増えており1ミスぐらいなら合格が可能かもしれませんが、合格者の多くは満点を取っているのではないでしょうか。

計算問題は難しくはありませんが、1問につき1箇所は処理に迷うような問題があります。これを正解できるかが計算のキーポイントとなります。その他の定番論点は絶対に間違えることはできません。

計算問題の習得には問題演習を積み重ねることが近道ですが、過去問自体がそれほど難しくなく、予備校のカリキュラムの演習量も十分ではありません。市販の問題集もほとんどありませんので演習不足を補うのは困難です。

 

(3) 法人税との関連

予備校の案内では、(法人)事業税は法人税に関連しているので、事業税は法人税の学習者に利点がある旨の記載がありますが、事業税の学習自体には法人税の学習と重なる部分はありません。

 

4. 合格可能性

事業税は、学習範囲が狭いものの受験生のレベルは高く合格者数が少ないこと、理論暗記はできるものの試験時間を踏まえた解答が難しいこと、計算は高得点勝負でミスが許されないことから、運の要素が強い科目と思います。法人税や消費税などは合格レベルがどの程度かおおよそ見当がつきますが、事業税は合格レベルがどの程度か把握しづらい科目だと私は思います。

 

5. 事業税の選択

私は、答練不足になりがちで合格レベルが明確ではなく、運の要素が強い事業税は選択すべきではないと思います。

唯一事業税を選択しても良いのは、予想外に法人税が合格し1月からの勉強時間に余裕ができた場合に、運よく合格することを期待して1回限定で受験するケースのみだと思います。学習量は少ないため1月からで十分間に合います。

(なお、同様のケースで予想外に所得税が合格した場合には、通常は住民税を選択すると思います。)

不確実性が高いため翌年以降も事業税を受験するのはお勧めしません。ミニ税法であれば、運の要素がほとんどなく、成績上位者から順当に合格する国税徴収法の方がおすすめです。

実務を重視するのであれば、学習量が多く受験生のレベルも高いですが、成績上位者から順当に合格する相続税を選択した方が良いと思います。

 

事業税は速記試験になります。

ボールペンの色は青が見やすく、ゲルインクが使いやすいのではないかと思います。

 

税理士試験の科目別学習ポイント(国税徴収法編)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報をお伝えします。

 

今回は国税徴収法の学習のポイントについてのお話です。

 

1. 試験の概要

(1) 問題構成

国税徴収法税は大問二問でその中に小問がいくつかあります。大問の配点は50点、50点だったり40点、60点だったりします。小問の数も年によって変わります。

配当計算の問題も出題されますが、計算過程と根拠を解答する問題となっており計算問題というより理論の事例問題となっています。理論100%の科目と言っていいと思います。

 

2. 難易度

(1) 学習量の比較

法人税消費税相続税と同様に予備校の標準学習時間と理論の題数で比較してみます。

 

予備校の標準学習時間と比較すると以下の通りとなっています。

簿記論・財務諸表論:450時間

法人税所得税:600時間

相続税:450時間

消費税:350時間

国政徴収法:150時間

 

理論の題数で比較すると以下の通りです。年や予備校によって題数が変わりますのでおおよその目安です。理論の題数の方が科目ごとのボリュームが分かり易いと思います。

法人税:125題

相続税:65題

消費税:40題

国税徴収法:45題

 

予備校の標準学習時間には理論の暗記時間は含まれていません。国税徴収法の勉強量は消費税の5-6割、法人税所得税の3-4割程度ではないかと思います。

 

(2) 合格率

合格率は11-13%程度で他の科目と同レベルですが、第64回(2014年)以降の8年間で最も合格率が高かった年が第64回(2014年)の14.2%、最も低かった年は第67回(2017年)の10.7%となっています。合格率が高くなるボーナス年がない印象です。

 

(3) 受験者数と受験者のレベル

国税徴収法は、所得税と受験者数が同じくらいです。ミニ税法では消費税が圧倒的に受験生が多いですが、その次に受験者数が多く住民税・事業税の4-5倍、固定資産税の1.5-2倍となっています。

 

国税徴収法は、大学院免除の人や税法初学者が選択することが多く、受験生のレベルは高くないと思います。

 

3. 合格への戦略

(1) 問題の傾向と対策

① 理論の分量と傾向

国税徴収法の理論は題数こそ消費税と同程度ですが、ページ数にすると消費税の1.5倍ぐらいあります。意外と分量があると思います。

私は、理論マスターを見た時に思ったより分厚くてびっくりしました。

小問を含めると理論全体の2-3割は本番の試験で出題されます。5年程度で全範囲が出題されているというイメージです。頻出論点は毎年のように出題され、前年に出題された理論も切り口を変えて連続で出題されることもあります。したがって、Cレベルの論点はないと言っていいでしょう。全ての理論を覚えなければなりません。

全て理論問題でべた書きの問題も出題されますが、横断的な問題、事例問題趣旨を問う問題も多く出題されます。

 

② 学習方法

国税徴収法の理論は、他の税法と比べ理論間のつながりが強いです。カリキュラムが一巡して全体像が分かると理解が進み、理論も暗記しやすくなります。横断的な問題も多く出ますので、早めに一巡して理解を深めましょう。分量こそ多いものの理論間のつながりが強い分、他の税法よりも暗記はしやすいのではないかと思います。

 

③ 趣旨

国税徴収法では趣旨を問う問題が多く出題されます。答練で出た問題は確実に解答できるよう暗記し、予備校のテキストに書かれている法令の趣旨も本番では自分の言葉でいいので解答できるように暗記する必要があります。

 

(2) 配当問題

配当問題は、1で記載した通り、計算過程と根拠を解答する問題となっており計算問題というより理論問題です。配当問題では、滞納者は複数の税金を滞納しており、銀行借入などの私債権も多い複雑な問題が出題されます。配当問題で満点を取ることは可能ですが、他のミニ税法(消費税を除く)と異なり、満点を取るのは簡単ではありません。

配当問題を習得するには、予備校の答練、問題集に加え過去問の配当問題を繰り返し解くことが重要と思います。

 

(3) 過去問

国税徴収法は改正が少なく過去問の研究が有効です。過去問を解くと横断的な問題、趣旨を問う問題が多く出題されていることが分かります。また、配当問題も難しいことが分かります。

予備校では週1回の講義・答練で試験範囲を一通り学習しますが、本番試験の対策には足りない部分があると思います。

自分で20年分の過去問を2周することをお勧めします。過去問と解答・解説は予備校のテキストにあると思います。過去問を解くことで予備校のカリキュラムで足りていない部分を自分で補うことが出来ます。会計科目、国税三法、消費税では予備校のカリキュラムのほかに自分で学習する余裕はなく、また、その必要もないと思います。国税徴収法であればその余裕はあり、かつ、過去問の研究は大変効果が高いと思います。

(4) 時間配分

国税徴収法は、税理士試験の中で唯一見直しする時間がある科目と言われています。解答スピードはそれなりに必要ですが、満点勝負でも速記試験でもなく、落ち着いて試験に臨むことができると思います。

 

4. 合格可能性

国税徴収法は、理論のみで運の要素がほとんどなく、成績上位者から順当に合格する科目と思います。受験生のレベルも高くありません。合格の可能性だけを考えるのであればお勧めの科目です。

顧客が滞納したり納税の猶予を受けようとしたりしない限り使わない科目ですので、実務的な科目ではないと思います。

 

5. 学習スケジュールと選択順序

国税徴収法は、年明けからでも合格レベルに達することは可能と思います。とはいえ、意外と理論の暗記量が多く、全体像を把握するのが重要なため、9月の基礎期から応用期にかけて学習範囲を2周し、直前期に過去問の研究をするのが1年で合格レベルに達するには確実な方法であると思います。

国税徴収法は理論だけですが税法の1科目目や2科目目に選択するのはお勧めしません。最終科目に選択すべきと思います。税法経験者であれば理論暗記の経験があり、初学者に対して有利になりますが、税法1科目目ではそのメリットがありません。また、他の税法では理論と計算を両方学習する必要がありますが、理論のみの学習に慣れてしまうと理論と計算の同時学習に戻るのが大変になります。

 

国税徴収法は、実務は考えずに試験合格のみを目的とし、かつ、税法3科目目であればお勧めの科目と思います。

 

ボールペンの色は青が見やすく、ゲルインクが使いやすいのではないかと思います。

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

税理士試験の科目別学習ポイント(相続税編)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報をお伝えします。

 

今回は相続税の学習のポイントについてのお話です。

 

1. 試験の概要

(1) 問題構成

相続税は、大問二問で第一問が理論で2問、第二問が計算、配点は第一問の問1と問2で合計50点(内訳は非公開)、第二問50点と毎年決まった問題構成となっています。

 

(2) 第一問(理論)

第一問は理論で2問に分かれています。69回(2019年)までは、べた書きと簡単な事例問題が主に出題されていました。70回(2020年)、71回(2021年)は2問とも事例問題で、自分で場合分けをして解答する法人税でよく見られる形式の問題も出題され、難易度が上っており注意が必要です。

 

(3) 第二問(計算)

事例に即して各相続人等の納付すべき相続税額を解答する問題が毎年出題されます。

 

2. 難易度

 

(1) 学習量の比較

法人税消費税と同様に予備校の標準学習時間と理論の題数で比較してみます。

 

予備校の標準学習時間と比較すると以下の通りとなっています。

簿記論・財務諸表論:450時間

法人税所得税:600時間

相続税:450時間

消費税:350時間

 

理論の題数で比較すると以下の通りです。年や予備校によって題数が変わりますのでおおよその目安です。理論の題数の方が科目ごとのボリュームが分かり易いと思います。

法人税:125題

相続税:65題

消費税:40題

 

相続税の勉強量は法人税所得税の7-8割程度ではないかと思います。

 

(2) 合格率

合格率は11-13%程度で同レベルですが、第64回(2014年)以降の8年間で最も合格率が高かった年が第64回(2014年)の13.4%となっています。合格率が高くなるボーナス年がない印象です。

 

(3) 受験者数と受験者のレベル

相続税は、会計科目、消費税、法人税に次いで受験者数が多く、所得税より受験者数が多い科目となっています。

相続税は、法人税所得税を合格後に受験する受験生が多く、また、最終科目としている受験生も多いため、受験生のレベルは高いです。私は、税理士試験の科目の中で最も受験生のレベルが高いのではないかと思います。

 

(4) 合格の可能性

相続税は額種範囲が広く内容も複雑であるため、合格レベルに達するまでに相応の時間を要します。成績上位者から順当に合格する科目とは思いますが、受験生のレベルが高く、試験合格の可能性だけを考えるのであれば、相続税を選択しない方が良いのではないかと思います。

 

3. 合格への戦略

(1) 理論問題の傾向と学習方法

① 理論の傾向

理論問題については、事例問題でもべた書で解答できる箇所も多いです。

計算に関連する理論も出題されますが、要件や手続などの記載も求められ、必ずしも計算と結び付けて暗記できるものばかりではありません。また、計算とはそれほど関連しない個別理論も出題されます。

相続税は改正が多い税法といえ、改正論点が出題される可能性が高いです。

 

② 学習方法

本番の試験は計算も含め解答量が多く時間が足りなくなりますので、A、B及び改正論点はペンが止まらないレベルで暗記する必要があります

計算とあまり関連しない手続関連や個別理論の暗記も必要となります。

相続税は受験生のレベルも高いですので、理論暗記の精度も高いレベルが求められると私は思います。

 

(2) 計算問題の傾向と学習方法

① 分量が多い

相続税の計算問題は分量が多く合格者でも解答しきれません予備校による標準的な解答時間では75分程度ですが、各相続人の課税価格と相続税額は全てを集計して記載しようとすると最低10分はかかり解答欄を全て埋めるのは困難です。本番の計算問題を全て埋めようとすると90分はかかるのではないかと私は思います。

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② 法定相続人の判定

相続税の計算問題では最初に法定相続人の判定を行います。

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法定相続分基礎控除額には確実に配点があると思われます。相続人の判定は生命保険金など複数の箇所に関連しており合否に大きな影響があります。養子が存在していたりして親族関係が複雑な問題の場合、法定相続人の判定を慎重に行わなければなりませんが、長くても5分で正解を出さなければ他の問題を解く時間がなくなってしまいます。

 

③ 宅地

宅地は計算パターンが多いです。小規模宅地等の特例も毎年出題され解答量も多くなります。

 

④ 取引相場のない株式

宅地同様、取引相場のない株式も計算パターンも解答量も多く難しいです。

最初の特定の評価会社の判定を間違えると全く得点することができず、最初の判定を慎重に行う必要があります。とはいえ、全体の分量が多いためそれほど時間を掛けることができません。

一般の評価会社の計算パターンも複雑で、問題によっては資料の読み取りに時間がかかり場合もあります。

 

⑤ 戦略

最初に解くことになる法定相続人の判定を、時間を掛けずに正解しなければなりません。上場株式や生命保険金、退職金、債務控除、税額控除など解答量の少ない問題は確実に得点しなければなりません。その上で、宅地や取引相場のない株式等でどれだけ得点を積み上げていくかが合格へのカギとなります。

課税価格と税額の集計をどの程度解答すれ良いかは私には分かりません。理論の時間を考慮すると全ての解答欄を埋める時間はないと思います。

 

⑥ 学習方法

総合問題も個々の論点の積み上げですので、合格レベルに達するには個々の論点を正確かつ迅速に解答できるよう問題演習を繰り返す必要があります。

簿記論、法人税、消費税の計算問題対策では、直前期からは総合問題の答練と解き直しで十分と思いますが、相続税では直前期においても答練の解き直しのほか、個別問題の問題集・トレーンニングも解き直し、解答パターンを体に染み込ませる必要あると思います。

 

(3) 問題量と時間配分

上記のとおり、相続税の問題量は多いです。理論も全て解答しようとすると解答量が多くなりますし、計算も分量が多いです。

理論45分、計算75分が標準的と言われていますが、理論・計算ともに時間が厳しいです。

理論についてはべた書きで対応できる問題は時間を掛けずに解答する必要があります。計算への時間配分を考えて書きすぎないようにしなければなりません。

答練で時間配分の訓練をすることがとても大切です。

 

相続税は、内容が難しく分量も多いです。受験生のレベルも高いですが、やりがいのある科目だと思いますので、頑張りましょう。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

ボーナスを株で貰った時の確定申告の思い出

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。

 

確定申告の季節ですので、今回は税理士試験から離れて確定申告の思い出を書きたいと思います。

 

1. ボーナス支給の状況

かなり昔に働いていた会社で、ボーナスの一部を自社株(上場株)でもらったことがありました。

ボーナスを株でもらってもお金でもらっても所得に違いはないので申告する必要があります。普通であれば貰った株の金額を所得とすればいいのですが、ボーナスの確定する時期に株価が暴落してしまったので、いくらで申告するかが問題となりました。

 

例えば、ボーナス100,000円分を自社株で支給しようとしたとします。ボーナスを確定するときの支給基準日の株価が1,000円だとすると100株をボーナスとして従業員に支給することとなります。

上場企業の場合、インサイダー取引の観点で従業員が自社株を売買できる期間を制限していることが多いです。当時私の働いていたその会社では、従業員がA株の売買ができる期間は決算発表後の1週間程度となっていました。

タイムラインは、ボーナスの支給基準日(A)-決算発表日-売買可能日(B)で、AからBまでは2週間程度の期間があった記憶しています。当時のこの期間はマーケットが非常に混乱していて、AからBの間に会社の株価が暴落してしまいました。

会社としては10万円分のボーナスを自社株で支給したことになっていますが、売買可能期間になってから従業員がその株を市場で売却し実際に手にすることが可能な金額は3万円しかないというような状況でした。

 

2. ボーナス支給時の確定申告

この場合、従業員はいくらで確定申告をするべきでしょうか?

会社は、監査法人から従業員の所得税の申告に関する見解を取得して、従業員に通知しました。

会社からの通知では、①株で取得したボーナスについても給与や現金で受取ったボーナスと同様に確定申告が必要なことに加え、②申告すべき金額は、従業員が株を実際に得ることのできる金額は売買可能日(B)を基準としても問題ないのではないかとの監査法人の参考意見も添付されていました。監査法人は従業員の税務申告の代理人ではありませんが、専門家の意見として確定申告の手助けになるものでした。

 

私は、それほど立場が上ではなかったので株でもらったボーナスはそれほど多くありませんでしたが、会社の通知通り、売買可能日(B)を基準とし、監査法人の意見を参考資料として申告書に添付し確定申告及び所得税の納付をしました。

後で聞いたところでは、多くの同僚も同様の申告をしたようです。

申告してからかなり年数(5年超)が経っていますが、私にも同僚たちにも税務署から特に連絡はなかったので、この申告は問題視されなかったものと思います。

 

3. 売却時の確定申告

数年後に当該株式を売却しました。あまり大きな譲渡益は出なかったと記憶しています。その時も、所得税の申告と矛盾しないよう売買可能日(B)の株価を基準として譲渡益を計算し、自分で作成した明細を添付し確定申告及び所得税の納付をしました。支給基準日(A)の株価を基準とした場合、譲渡損となっていたかもしれません。こちらも、申告してからかなり年数(5年超)が経っていますが、税務署から特に連絡はありません。

 

4. 追徴課税

後日当時の同僚から聞いた話では、株でもらったボーナスについて確定申告をしなかった人がいたとのことです。税務署から税務調査が入り、立場が上で多くの株式をボーナスとして取得していた人は追徴税額が相当の金額になったらしいです。また、追徴課税の基準とされた株価は支給基準日(A)の株価とされたようです。株価はある程度回復していましたが、支給基準日(A)の株価にまでは戻っていませんでした。株を売却しても追徴税額に満たなかったかもしれません。

会社が支給基準日(A)の株価を基準としてボーナスを支給している以上、所得も支給基準日(A)の株価であるとの見解も合理性があるように思えます。

税務署の見解は分かりませんが、きちんと申告した人には売買可能日(B)の株価を基準とすることに一定の合理性があり、担税力(実際に税金を支払う原資があるかどうか)も考慮して許容したのではないかと私は思います。

 

結論としては、確定申告はちゃんとやりましょうということです。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。