T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報を発信しています。金融関係の仕事をしながら官報合格済み。その他キャリアや英語学習の情報も発信しています。

税理士試験の理論学習法(スケジュール編)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。

 

今回は税法の理論学習のスケジュールについてのお話です。

理論学習法についてはいくつか記事を書いてきました。

 

税理士試験の理論学習法(基本編) - T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

税理士試験の理論学習法(実践編) - T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

税理士試験の理論は理解が重要 - T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

税理士試験の理論学習法(事例問題編) - T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

 

1. 理論の合格レベル

理論学習、特に理論の暗記については本番の試験から逆算して精度を高めていく必要があると思います。これまでの記事に書いていますが、私は理論の合格レベルとは以下のレベルに達していることと思います。

 

・A、B論点と改正論点をすらすら解答できるレベルで暗記している

・C論点を白紙にならない程度に暗記している

・事例問題に対応できる

本番の時にこのレベルに達していれば合格することができると思います。

 

2. 理論の習得には時間がかかる

私は、以下の理由から理論の習得には時間がかかると考えています。

(1) 理解に時間がかかる

これは以前の記事でも書きましたが、理論(特に計算に関連する理論)は理解が重要です。理解があれば暗記も楽になりますし、応用問題に対応できるようになります。理解するためには講義の視聴、テキストの読み込み、計算演習などが必要で時間がかかります。

 

(2) 理論暗記の定着に時間がかかる

理論は一度覚えただけでは定着せず、すぐに忘れます。何度か覚え直してやっとすらすらと止まることなく書くことができるようになります。

 

3. 理論学習のスケジュール

上記の通り理論の習得には時間がかかるということを念頭に置き、本番で合格レベルに達することができるよう、スケジュール感をもって理論学習をする必要があります。

私が考える理論学習のスケジュールをお伝えします。

(1) 基礎期(9~12月):予備校のミニテストや答練の予告理論をカリキュラム通りに暗記します。基礎期は基本的な理論の骨子となる部分のみがテストで出題されます。テスト後は、忘れてもいいのでまずは一度暗記します。受験後から振り返ると基礎期の暗記量は少ないですが、初学者に予告理論を確実に暗記することは結構大変です。

 

(2) 応用期(1~4月):予備校の講義で理論の理解を深めつつ、答練の予告理論をカリキュラム通りに暗記します。予告理論の数も増えますので初学者にとってはかなりきついと思いますが、この時期の理論学習が重要です。ある程度忘れてしまいますが、答練後にもA、B論点を中心に理論を回して記憶の定着を図る必要があります。

 

(3) 5月~公開模試:6月中旬~7月初旬の公開模試に向け、この時期から事例問題の柱挙げの練習をしつつ、A、B理論と改正論点を回して暗記を定着させます。公開模試の時点でA、B理論と改正論点の暗記が完了していなければ本番では勝負になりません公開模試時点で暗記が完了していれば、その後理論を回すことで本番まで記憶が保てると思います。公開模試を中間目標とするのがお勧めです。公開開模試後は全受験生が勉強の質・量をあげてレベルアップをしてきます。最後の1カ月で理論暗記の精度を上げればいいと考えてはいけません。全受験生が同じことを考えており、公開模試後の1カ月で逆転するのは簡単ではありません。公開模試までにいかに完成度を高めておけるかが重要です。

 

(4) 公開模試~本番

公開模試後にはA、B論点と改正論点を回しつつ、C論点についても白紙にならない程度に暗記し、事例問題や計算問題に合わせてべた書きの理論の確認もします。公開模試の反省を活かして本番まで勉強をします。理論を回すのも飽きてきますが最後の踏ん張りが必要となります。合格をイメージして気力で乗り越えましょう。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

税理士試験の理論学習法(事例問題編)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。

今回は税法の事例問題についてのお話です。

 

1. 事例問題の出題傾向

前に書きました趣旨を問う問題の記事の時と同様に、第69回(2019年)から第71回(2021年)の試験問題で事例問題を調べました調査の対象は税法9科目×3年分(69回から71回)の27科目です。

f:id:T-Alex:20220124222443p:plain

私の受験経験も踏まえた科目ごとの所見は以下の通りです。

所得税3年連続事例問題が出題されています。

法人税事例問題が毎年出題されます。解答量は多いです。

相続税以前は個別理論が多く出題されていたとの印象がありますが、2年連続で事例問題が出題されています。事例問題のレベルは高く、解答量も多いと思います。

消費税:個別理論1題、事例問題1題が基本パターンのようです。事例問題は課税区分、仕入税額控除に関する問題が頻出で、小問形式の問題が多いようです。

酒税:事例問題はあまり出題されないようです。

国税徴収法[第二問]は配当計算となることもありますが、配当計算に法令の根拠の解答が要求されますので実質的には理論の事例問題です。

住民税:事例問題はあまり出題されないようです。

事業税:理論は1問が個別理論、1問が事例問題というのが基本パターンのようです。ただし、事例問題も実質的にべた書きです。

固定資産税:事例問題はあまり出題されないようです。

 

全体的なまとめとしては、国税三法(所得税法人税相続税)、消費税、国税徴収法の5科目では事例問題が頻出で重要度が高く、事例問題対策が必須で合否に直接影響すると思います。

その他の3科目(酒税、住民税、事業税、固定資産税)では事例問題対策の重要度低いと思います。

 

2. 事例問題の解答パターン

事例問題の解答パターンは、ロングバージョンショートバージョンの2つあると思います。

(1) ロングバージョン

ロングバージョンは大問1題全体が事例問題となっており、解答量も多い問題に対応する解答形式です。

①結論

②規定

③事例の規定へのあてはめ

④結論(繰り返し)

となります。

まず、結論を書きます。長い文章の場合には、先に①結論(答え)を書いて分かっていることを採点者にアピールします。社会人の方は報告書やプレゼン資料を作るときに、結論(概要やExecutive Summary)を最初に書くと思います。それと同じです。

次に②規定と③問題の事例の規定へのあてはめを記載し、最後にしたがって、XXXのように④結論を繰り返します。

これがロングバージョンの基本形となります。

法人税の大問の事例問題などはロングバージョンでの解答が必要となります。

どんな事例問題もロングバージョンで解答できるようにしましょう。

 

(2) ショートバージョン

ショートバージョンは設問が小問形式で、解答要求が数行程度となっている問題に対応する解答形式です。

ロングバージョンの②規定と③事例のあてはめをまとめて簡潔に記載し、④結論につなげます。分量が少ないので必ずしも最初に結論を書く必要はないと思います。

消費税で頻出の課税区分仕入れ税額控除に関する小問などは、ショートバージョンで解答することになります。

 

3. 事例問題の学習ステップ

事例問題の学習のステップは以下の通りと考えています。

(1) 理論暗記

事例問題の解答には、理論暗記ができておりべた書きができることが必須です。まずは、A、B理論の暗記が優先です。

 

(2) ロングバージョンの解答

次に、事例即してロングバージョンの解答を作成します。理論の暗記と理解ができていなければロングバージョンの解答を作成することができません。

 

(3) ショートバージョンへの短縮

ロングバージョンの解答が作れるようになったら、制限時間や解答欄に合わせてショートバージョンで解答できるようにします。答練、応用理論問題集、過去問の小問などで練習を繰り返します。

 

(4) ロングバージョンとショートバージョンの組み合わせ

設問・解答欄や時間配分に応じてロングバージョンとショートバージョンを組み合わせ、最適な解答ができるよう訓練しましょう。

 

(5) 事例問題からべた書きのアウトプット

答練等の事例問題の復習では、直接の解答だけでなく関連する理論のべた書き部分のアウトプットを同時に行うのが効率的です。理論暗記の確認になるだけでなく、事例を通じた方が理論の理解が深まり、理論暗記がより強固になります。理マスや理サブだけで理論を暗記するだけでは変化が乏しく暗記が進まない場合もあります。事例問題で変化をつけて脳を活性化させましょう。

 

(6) 計算問題からべた書きのアウトプット

計算に関連する理論については、計算問題に出てきた理論のアウトプットをするのもお勧めです。理論の理解につながったり、暗記に変化がついたりする点は(5)と同じです。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

税理士試験 間違いメモの活用

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。

 

今回は間違いメモについてのお話です。

 

試験勉強では間違いメモや間違いノートを作る人も多いのではないでしょうか。税理士試験の勉強で私がどのように間違いメモを作り活用していたか紹介したいと思います。皆さんの勉強の参考になればうれしいです。

 

1. 間違いメモの内容

応用期に入ると主に計算問題で通達に基づく細かい論点がテキストや答練に出てきます。応用期の論点はテストで間違えたり迷ったりしやすい点で、かつ、合否に直結すると考えています。私は、これらの細かい論点、中でも答練で間違えた箇所を重点的に間違いメモを作っていました。テキストや答練の解説にも記載されていますが、自分で一か所にまとめておいた方が確認に便利です。

 

メモの内容は、各論点を1~2行程度で簡潔に記載するというものです。場合分けや計算式がある場合には5行程度になることもあります。

いくつか記載例を挙げておきます。私の学習時のメモですので現行の取扱いと異なることがあるかもしれません。ご了承ください。

 

法人税

・資本的支出であっても修繕費 20万円未満又はおおむね3年以内の周期

・使用人兼務役員に対し、他の使用人と違う時期に賞与を支給 法34条2項により損金不算入 実質基準・形式基準とは別にする

・完全支配関係のある株式 譲渡損益を認識しない 資本金等の額を増減させる

 

(消費税)

・土地付建物の貸付 一体で判定 住宅:非課税 その他:課税

特許権、商標権等の内外判定は登録地 登録国が2以上の場合は住所地

・派遣会社に支払う給与負担金 非課税 派遣料 課税仕入

 

相続税

・雇用主が負担した保険料はその従業員が負担したものとみなす

贈与税には国等に贈与した場合の非課税の規定なし

・2筆の土地を異なる者から借りていても利用状況が同じなら合わせて評価

 

2. 作成方法

間違いメモの作成方法は、ノートに記載スマホに入力PCに入力などいくつか方法があります。私は、PCでWeb通信を受講しており、また、理論のアウトプットもPCを使用していましたので、PCを使いワードファイルで間違いメモを作成していました。

ご自身のやりやすい方法でいいと思います。

 

3. 活用

私の間違いメモは、1科目5~7ページ程度となりました。日々の学習では、寝る前に全体を一読することによる記憶の呼び起し答練前の論点確認などに活用していました。注意点がコンパクトにまとまっており、また、自分が間違えた点を二度と間違えないよう工夫して書きますので他人の作ったテキストやまとめツールより記憶に残りやすいと思います。

公開模試や本番の試験でも印刷して持っていきました。テスト直前の確認にとても役に立ちました。荷物が少なくて済むという点でもとても良かったと思います。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

税法の趣旨を問う問題

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。

 

今回は税法の趣旨を問う問題についてのお話です。

 

1. 過去問の調査結果

以前の記事で、税法では趣旨や理由を問う問題が出題されることがあるのでその対応が必要と書きました。

69回(2019年)から国税庁が試験問題を公表しているので、どのくらい趣旨や理由を問う問題が出題されているか調べてみました。調査の対象は税法9科目×3年分(69回から71回)の27科目です。

私が調べたところ、11/27(40%)科目で計18題出題されています。私は結構な頻度で趣旨や理由を問う問題が出題されているという印象を持ちました。サンプル数が少ないですが、相続税とミニ税法で趣旨や理由を問う問題が出題される可能性が高そうです。

 

【過去問】

〇 第71回(2021年)

相続税法 第一問 問2

Aの行った事業資金の贈与に関し、どのような贈与税の課税関係が考えられるか、関連する条文とその趣旨に触れつつ説明しなさい。

 

酒税法 第一問 問2

(1)酒類の販売業に免許制度が採用されている趣旨を説明するとともに、

(2)酒場、料理店その他酒類をもっぱら自己の営業場において飲用に供する業については、 酒類の販売業免許を要しないこととされているが、その趣旨について説明しなさい。

 

国税徴収法 

第一問 問2 (1)不動産等のうち、次の財産の公売における売却決定の日が、公売をする日と異なる日とされている理由について簡単に説明しなさい。

第二問 問1(1) 参加差押えをした税務署長による換価執行を定めた趣旨(理由)を説明し なさい。

・住民税 第1問 問1(1)、(2)、(3)

令和 3 年度分の個人住民税における次の制度の意義及び概要に関し、所得税における取扱いとの相違点に留意しつつ、簡潔に述べなさい。

 

・固定資産税 第一問

問 1 地方税法に規定されている固定資産税に関する申告制度について、その趣旨及び内容(申告の対象となる者、申告先、申告すべき事項)について説明しなさい。

問 2 土地名寄帳及び家屋名寄帳について説明した上で、固定資産税の免税点について、 その趣旨、内容及び免税点の判定方法について説明しなさい。

 

〇 第70回(2020年)

相続税法 第一問

問1  (2)相続税法に特別寄与料に係る規定が設けられている理由に触れつつ、 D の相続税の課税価格及び税額の計算と申告手続について説明しなさい。

問2 代物弁済が行われたことにより、贈与税の課税が問題となる場合について、関連する条文とその趣旨に触れつつ説明しなさい。

 

酒税法 第一問 問2(1)

構造改革特別区域法第27条第9項の規定の趣旨を述べなさい。

 

国税徴収法 第一問

(1)不動産等の公売において、「 最高入札価額に次ぐ高い価額による入札者から次順位によ る買受けの申込みがあるときは、その者を次順位買受申込者として定めなければならない」とされている趣旨(理由)を説明し なさ い。

 

(2)不動産等の公売において、最高価申込者の場合と異なり、次順位買受申込者を本人の申込制としている理由を説明しなさい。

 

〇 第69回(2019年)

消費税法 第一問 問1(1)ロ

輸出免税制度が採用されている理由について、国境を越えて行われる取引に係る消費税の課税の考え方に触れつつ、簡潔に述べなさい。

 

酒税法 第一問 問1

酒税法第 29 条の輸出免税の規定が設けられている趣旨について述べるとともに、輸出酒類販売場から移出する酒類に係る酒税の免税について、制度が設けられた趣旨、制度の概要及び酒税の免除の対象となる酒類の要件について述べなさい。

 

・住民税 第一問 問1①

個人住民税の所得控除制度の趣旨及び概要(所得税と取扱いが異なる点については重点的 に言及すること。

 

2. 制度趣旨とは?

税理士試験で問われる制度趣旨とは何でしょうか?予備校の講義では趣旨や理由はある程度作文でもいいと指導されますが、個人の意見を自由に書くものではありません。そのような制度が制定された理由・背景について、財務省国税庁の公式見解に沿った解答をする必要があります。

では、公式見解はどうやって把握することができるのでしょうか?

 

まずは、税制改正の流れについて簡単に説明します。

8月頃:各省庁が業界団体等から税制改正に関する要望を取りまとめ、財務省総務省に提出

9~12月:与党税制調査会政府税制調査会での検討

12月中旬:与党が「税制改正大綱」を発表

12月下旬:与党の「税制改正大綱」をベースに、政府が「税制改正の大綱」を発表

2~3月:国会での審議・決議

4月:改正法令の施行

 

財務省税制改正にあたり、改正の内容や概要とともに、改正に至る議論の内容や改正の趣旨・目的などを「税制改正の解説」にまとめて公表しています。税制改正の解説に記載された改正の趣旨や目的が財務省の公式見解となります。税理士試験でもこの公式見解に沿った解答をする必要があります。

税制改正の解説は、分量は多いものの記載は難解ではなく、普通に読んで理解できると思います。

税制改正の概要 : 財務省

予備校のテキストには、ここから重要な部分が抜粋され記載されています。

 

ご自身の受験科目の改正論点については、財務省税制改正の解説を読むのもいいと思います。改正論点は1科目で2~3個と思いますし、分量は多いですが予備校のテキストより詳しく記載されているので記憶に残りやすいと思います。

 

3. 趣旨の出題の目的

税理士試験でなぜ趣旨を問う問題が出題されるのでしょうか?

税法は様々な社会の変化に応じて変わっていき、複雑でなぜそのような規定が定められているのか条文を読んだけではその規定がなぜ必要なのか理解が難しいものもあります。

税理士は、単に法令の規定通りに税務処理ができるだけでなく、規定が制定された理由や趣旨を理解し、これを顧客や社内の関係者などに説明し納得してもらうことも重要となります。私は、これが税理士試験の税法の試験で制度趣旨が問われる理由と考えています。財務諸表論の理論が税理士試験に出題される理由と同じです。単にべた書きで解答できる問題よりも、制度趣旨を含めた問題の方が税理士の適性を測る試験として良問であると私は思います。

 

4. 試験の合否への影響

趣旨が問われる問題は、試験問題で解答要求がされている以上、配点が必ずあると考えられます。

趣旨まで解答できる受験生はそれほど多くないと考えられ、解答することができれば頭一つ抜け出すことができると思います。趣旨については、通常の理論ほど一字一句暗記する必要はなく、キーワードと大まかな内容が合っていればある程度の点数を取ることができると思います。

以上を踏まえると、私は、法令の趣旨を含めて理論を覚えることは、追加的な労力が少なく点数を稼げるため効率が良いと考えます。また、理論の理解にも役立ちます。予備校の講義や答練で触れられたものについては、本番でも何らかの解答ができるようにしておくことをお勧めします。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

大学入試共通テストから税理士試験を考える

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。

 

以前、大学入試の経験が税理士試験に活きるという記事を書きました。2022年の大学入試共通テストが難化し、特に数学IAの平均点が40点を切るのではないかと話題となっています。

今年の問題を見て以下の4点から、私は、税理士試験の受験には大学入試(一般入試)の経験が役立つと改めて思いました。

 

1. テストの変化への対応

今年の共通テストの数学IAは、出題形式や内容が前年までの傾向とは大きく異なっています。税理士試験でも試験委員が変更となったときなどは、前年とは全く違う形式の問題が出題されたりします。良問への変化ならいいのですが、問題文が日本語として意味が分かりづらかったり、問題の指示が不足していたりと悪問への変化もしばしばあります。受験生はパターン化した問題への対応だけでなく、試験の変化にも対応できるような深い理解が必要となります。深い理解があれば見かけの変化に惑わされずに実力を発揮することができます。本番で見慣れない問題が出たとしても落ち着いて対応するようにしなければなりません。

このようなテストの変化に対応するには、大学入試のペーパー試験の経験が活きると思います。

 

2. 分量の増加

今回の数学IAはテストの分量が大幅に増加し時間内に解き終えなかった受験生も多いようです。今回の試験でも(税理士試験の合格率に相当する)上位10%の受験生であれば、分量が増えたとはいえ最後までたどりついているのではないでしょうか。

税理士試験も分量が多く、2時間の制限時間では最後まで解答するのは難しいですが、税理士試験の合格者は難しい問題を捨てつつ最後まで解答しているのではないかと思います

私は、合格した科目は何とか最後までたどり着き、不合格のときは最後まで解ききれなかったと記憶しています。もちろん、全問正解したということではありません。

 

3. テストの難易度

今回の数学IAは分量の増加だけでなく、テスト内容も大幅に難化しているようです。難易度の点では、税理士試験の合格率に相当する上位10%の受験生であれば、テスト中に自分が解けない問題は他人もできないと自信をもって判断して落ち着いて解答し、相対的にはそれなりの結果にまとめられたのではないでしょうか。

税理士試験も同様で合格レベルに達するには、自分が解けない問題は他人もできないと自信をもって難問を捨てられるようになる必要があると思います。答練で間違えたり飛ばしたりした問題の正答率が高い場合には、まだ合格レベルに達していないといえます。

 

4. 次の科目への気持ちの切り替え

数IIBの平均点が低いのは、数IAのショックが尾を引いている部分もあると思います。税理士試験でも最初の科目の出来が芳しくなかった場合などに、後続の科目に影響があることがあります。例え簿記論の出来が良くなかったとしても、気持ちを切り替えて財務諸表論や税法の試験に挑まなければなりません。このように、前の科目の出来を次の科目に引きずらないことの重要さや気持ちの切り替えは、緊張する本番の試験を経験しないと得られないと思います。

 

税理士試験の内容については色々言いたいこともあるのですが、それは別の機会に書きたいと思います。

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

税理士試験の理論は理解が重要

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。

 

今回は、理論の理解についてのお話です。

前回前々回の記事で理論は理解が重要と書きました。第71回(2021年)の消費税の問題に丁度よい問題がありましたので、その問題を使って私の考えを書きたいと思います。

 

1. 試験問題

まずは、試験問題を見てみましょう。消費税法の第一問、問2(3)です。

 

内容の正誤を答え、その正誤についての理由を 消費税法令に沿って説明しなさい。

不動産業を営む法人C は、国外に所有している土地の売却のために、国内の弁護士Yに対し、国内において行ったコンサルティ ングに係る手数料を支払った。

Cは仕入控除税額の計算に当たって課税売上割合が 95% に満たないことから、個別対応方式( 消費税法第 30 条第 2 項第 1号に規定する計算方法)を適用しており、当該コンサルティングに係る手数料を課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するものに区分している。

 

本問は、国外取引に係る仕入税額控除の取扱いの問題です。基本通達11-2-13にある通り、定番の論点の一つと言えます。

第2節 課税仕入れの範囲|国税庁

 

結論としては、設問の取扱いは誤りで、当該コンサルティングに係る手数料を課税資産の譲渡等にのみ要するものに区分するのが正しい取扱いとなります。

 

2. 取引区分と仕入税額控除の仕組み

取引区分と仕入税額控除の仕組みを簡潔に説明します。正確な説明はテキスト等で確認してください。

 

事業者が納付すべき消費税=課税対象の取引について預かった消費税-その取引の仕入れについて支払った消費税(「仕入税額控除」)

となります。

 

(1) 取引区分

消費税の課税対象の取引は、国内で行われた資産の譲渡等(非課税取引を除く)です。

国外に所有している土地の売却は、国外取引のため課税対象外となります。

一方、国内の弁護士に支払ったコンサルティングに係る手数料は課税対象の取引となります。

非課税取引とは、国内における資産の譲渡等のうち法令で定められた一定の取引をいいます。土地の売却が国内の土地であった場合には非課税取引に該当しますが、本問では国外の土地なので非課税取引には該当しません。

 

取引区分を図示すると以下のようになります。取引ごとの課税上の取扱いを正確に理解しているかが第一のポイントとなります。

f:id:T-Alex:20220117212301p:plain

 

(2) 仕入税額控除の仕組み

個別対応方式の仕入税額控除については、支払った消費税を①課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課税対応)、②その他資産の譲渡等にのみ要するもの(非課税対応)、③①と②に共通して要するもの(共通対応)に区分し、①は全額②は控除できず③は課税売上割合で按分して、支払った消費税を預かった消費税から控除します。

 

本問では、国外の土地の売却は国外取引のため課税対象外となることは容易に分かります。

ここで、国外の土地の売却のためのコンサルティング手数料に係る消費税は、上記の①課税対応でしょうか?それとも②の非課税対象でしょうか?

 

法令の規定を丁寧に読み解き、取引区分の正確な理解があれば、図の通り本問の国外の土地の売却は課税資産の譲渡等に該当するため、コンサルティング手数料は①として全額控除することが分かります。

また、基本通達11-2-13を知っていれば、法令の規定を考えなくても正誤は分かります。予備校のテキストにも載っているはずです。

 

3. 国外取引のための課税仕入れ区分が課税対応となる理由

本問のように国外取引のための課税仕入れ区分が課税対応となる理由は何でしょうか?国外取引は消費税の課税対象外で預かった消費税がないにもかかわらず、なぜ仕入れに係る消費税を控除(還付)することができるのでしょうか?

 

消費税は、国内において消費される財貨やサービスに対して税負担を求めることとし

ています。(このことを「消費地課税主義」といいます。)

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/syouhi/pdf/03.pdf

(税大講本より)

 

国外取引に係る仕入税額控除が認められないと、実質的に外国人が日本の消費税を負担することとなり、「消費地課税主義」に反することとなります。

(具体例)

日本の事業者が海外で簿価600万円の土地を売却し、コンサルティング手数料が110万円(うち消費税10万円)、その他経費を勘案して300万円の利益を確保する必要があるケースを考えます。

仕入税額控除ができる場合

10万円分の仕入税額控除(消費税の還付)ができれば、売却価額は1,000万円(600+110+300-10(還付消費税))となります。

仕入税額控除ができない場合

仕入税額控除ができない場合には、売却価額を600+110+300=1,010万円にしなければなりません。この場合、実質的に外国の購入者が日本の消費税10万円を負担していることとなります。

 

これが、国外取引のための課税仕入れ区分を課税対応として仕入税額控除の適用を受けることができるようにしている理由となります。

輸出免税取引に係る課税仕入れ区分が課税対応となるのと理由は同じです。

 

4. 解答例

説明部分の私の解答例を書いておきます。

(1) ロングVer

(土地の売却)

土地の売却は国外で行われたものでも資産の譲渡等に該当する。

課税資産の譲渡等とは資産の譲渡等から非課税取引を除いたものである。

本問の国外の土地の売却は非課税取引に該当しないため課税資産の譲渡等となる。

(手数料の支払い)

Y社に対するコンサルティング手数料の支払いは、国内における資産の譲渡等に該当し、非課税取引にも該当しないため消費税の課税対象となり、仕入税額控除の適用を受ける。

仕入税額控除)

本問の国外土地の売却は国外取引のため消費税の課税対象外となるものの、Y社に対するコンサルティング手数料に係る消費税は、個別対応方式における仕入税額控除を適用する場合には、当該土地の売却に直接要したものとして課税資産の譲渡等にのみ要するものに区分する。

 

(2) ショートVer

本問の国外の土地売却は、非課税取引に該当しないため課税資産の譲渡等に該当する。個別対応方式による仕入税額控除を適用する場合には、当該土地の売却に直接要したコンサルティング手数料に係る消費税は、課税資産の譲渡等にのみ要するものに区分する。

 

5. まとめ

本問においては、通達の取扱い自体を暗記していれば正誤は容易に分かります。

とはいえ、取引区分や仕入税額控除についての取扱い理由を含めた理解がなければ、法令のあてはめ難しいのではないかと思います。

もし国外取引に係る仕入税額控除の取扱いそのものは覚えていなかったとしても、輸出免税取引に係る仕入税額控除の取扱いの理由を知っていれば、その類推から正解を導き出すのも難しくないと思います。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

税理士試験の理論学習法(実践編)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。

 

今回は、理論学習法(実践編)についてのお話です。

前回の理論学習法(基本編)では、「需要な箇所から暗記する」、「計算と結び付けて理解・暗記する」、「小見出しと要件の個数、画像イメージを覚える」などを書きました。今回は、具体例を交えて私が実際にどのように理論暗記をしたかをお伝えしたいと思います。理論暗記のための一例として参考にしてください。

 

1. 理論の種類

私は理論の種類は3つあると考えています。

(1)計算の理論

(2)定義の理論

(3)手続の理論

 

(1) 計算の理論

計算の理論とは、法人税の「○○の額を益金の額に算入する」や相続税の「○○を相続税課税標準に算入する」といった、税額計算の理論です。計算とリンクして覚えられますので、まずは計算の理論から暗記することから始めます。消費税の最初に出てくる理論の「課税の対象」は、計算直結の理論の代表といえます。

 

(2) 定義の理論

定義の理論とは、法人税の完全子法人等の意義や定期同額給与、相続税の無制限納税義務者など用語の定義に関する理論です。計算に必須のものから計算とリンクして暗記しましょう。

前回も例示した法人税の受取配当等の益金不算入では、完全子法人株式等関係法人株式等その他の株式等で益金不算入額が異なります。計算でもこの3つの株式等の区分が重要となりますので、完全子法人株式等と関係法人株式等の定義を計算対策としても覚える必要があります。

計算に直結しない各種定義の暗記は後回しにします。

 

(3) 手続の理論

手続の理論とは、法令の適用を受けるための要件・条件に関する理論です。消費税の簡易課税の選択や相続税の相続時精算課税の選択など、計算にも関連する理論は暗記の優先度は高いです。

法人税の受取配当等の益金不算入の例では、適用の要件として、「確定申告書に益金不算入額及びその明細の記載がある場合に限り、記載金額を限度に適用する。」と規定されています。このような計算で出てこない細かな手続の理論は暗記の優先順位が下がります。

 

私が考える理論暗記の優先順位を◎、〇、△の順で示すと次のようになります。

 

f:id:T-Alex:20220116142603p:plain

 

2. 理論の文章構成と分解

(1) 文章構成

理論の文章構成は各項目によって少しずつ異なっていますが、次の型が基本形となっています。この型を意識して暗記した方が、アウトプットがしやすくなります。

(i) 要件・条件(「~の場合には」、「~のときは」、「~の場合において、~のときは」) 

⇒ (ii) 処理内容・結論(「○○の額を、益金の額に算入する」、「○○の規定を適用する。」)

 

(i)の要件・条件は、誰が、何をしたという処理の前提がきます。要件・条件の個数が多い場合や記載が長くなる場合などには、「以下に該当するときは」などと外だしされることもあります。(ii)は法令に規定された処理内容、すなわち結論が書かれます。

 

(2) 文章の分解

まずは、(i)の要件・条件と(ii)処理内容・結論に分解します。テキストに「/」などをつけて分けるのがお勧めです。次に、要件・条件が複数ある場合には番号を付けるのが分かりやすいと思います。

 

法人税の長期割賦販売の例でみてみます。

緑の「/」、「」、「」が私がテキストに書きこんんだ箇所、オレンジの部分が、私がテキストに蛍光ペンで塗った箇所となります。

 

内国法人が、長期割賦販売等に該当する資産の販売等をした場合において、その資産の販売等に係る収益の額及び費用の額につき、その目的物又は役務の引渡し又は提供の日の属する事業年度以後の各事業年度の確定した決算において延払基準の方法により経理したときには、/その経理した収益の額及び費用の額は、その各事業年度の益金の額及び損金の額に算入する。

 

「~延払基準の方法により経理したときには、」までが要件・条件で、「その経理した~」からが処理内容・結論となります。

(i)の要件・条件が2つあり、要件①が「長期割賦販売等をした場合」、要件②「延払基準の方法により経理したとき」となります。

(ii)処理内容・結論が「その経理した収益の額及び費用の額は、その各事業年度の益金の額及び損金の額に算入する。」となります。

 

(3) 重要な箇所の抽出

分解することによって、この規定は、要件・条件が2つあって、処理内容・結論は益金・損金算入額の取扱いであることが明確になりました。ただし、このままではまだ分量が多く、最初から全部を暗記するのは難しいです。そこで、要件・条件①、②、処理内容・結論の骨子となる部分を抽出し覚えやすくします。

この例では、

要件・条件①「長期割賦販売等をした場合

要件・条件②「延払基準の方法により経理とき

処理内容・結論「その経理した収益の額及び費用の額は、その各事業年度の益金の額及び損金の額に算入する。

となります。

これだけでも、本番でもある程度の点数が取れると思います。要件と結論を簡潔に記載できるよう、まずは骨子を暗記するのが重要です。本番での時間配分を考えた時の短縮形としても有効と思います。

 

抽出が適切にできるかどうかは、理論の理解次第です。理論は理解が重要というのはこの点にあります。理論の理解が十分であれば重要な箇所が抽出できるはずです。予備校の講師も理論解説の講義の中で説明してくれます。

 

残りの部分は徐々に暗記して行けばいいと思います。理論1題1題を完璧に暗記するよりも、骨子のみでよいので暗記した理論の題数を増やすことの方が重要です。

 

(4) テキストが長い理由

では、なぜテキストは長い文章となっているのでしょうか?テキストでこれ以上記載を省略すると規定として不正確になったり、日本語として意味不明になったりします。長年研究した結果が現行の理マスや理サブとなっていると私は理解しています。

 

3. 小見出しの暗記とアウトプット

理論はアウトプットにより、本当に暗記ができているか確認する必要があります。前回、理論の小見出しを覚えた方がいいと書きましたが、アウトプットのときには、頭から理論を書くのではなく、小見出しを書いてから内容を書くのが良いのではないかと思います。手書きだと分量を考えながら間隔を空けて小見出しを書くのは難しいですが、PCなら間に文字が挿入できるので簡単です。特に、PCの操作に慣れている社会人にはPCでのアウトプットがお勧めです。手も痛くなりません。注意点は、漢字が覚えられないということです。答練では解答用紙に解答を記載して漢字の確認もしましょう。

 

例えば、前回も例に出した相続税の債務控除の理論では、以下のように小見出しを先に書いて枠を作ってから、中身の理論を埋めていきます。上記1.や2.で記載したような重要な部分からアウトプットできればいいです。

1.債務控除

 (1)無制限納税義務者等

 (2)制限納税義務者

2.控除が認められない債務

3.控除すべき債務

 (1)確実な債務

 (2)公租公課

 (3)国外転出時等

 

4. 暗記方法の比較

理論暗記の方法についてはいくつか選択肢があります。私なりに比較してみました。

f:id:T-Alex:20220116144819p:plain

理論暗記は、机の前でなくてもでき、隙間時間も活用できます。

私は外で勉強するのは好きではなかったので基本的に自宅学習でした。理論の学習は、PCを使ってのアウトプットを中心にしていました。暗記が進んできたら黙読・暗唱も組み合わせて時間短縮を図り、このときは家の中を歩き回ったりしていました。五感を刺激しながらの方が暗記の効率があがるとも言われていますので、色々と試してご自身に合った方法を見つけてください。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。