こんにちは、T-アレックスです。
このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。
今回は、理論学習法(実践編)についてのお話です。
前回の理論学習法(基本編)では、「需要な箇所から暗記する」、「計算と結び付けて理解・暗記する」、「小見出しと要件の個数、画像イメージを覚える」などを書きました。今回は、具体例を交えて私が実際にどのように理論暗記をしたかをお伝えしたいと思います。理論暗記のための一例として参考にしてください。
1. 理論の種類
私は理論の種類は3つあると考えています。
(1)計算の理論
(2)定義の理論
(3)手続の理論
(1) 計算の理論
計算の理論とは、法人税の「○○の額を益金の額に算入する」や相続税の「○○を相続税の課税標準に算入する」といった、税額計算の理論です。計算とリンクして覚えられますので、まずは計算の理論から暗記することから始めます。消費税の最初に出てくる理論の「課税の対象」は、計算直結の理論の代表といえます。
(2) 定義の理論
定義の理論とは、法人税の完全子法人等の意義や定期同額給与、相続税の無制限納税義務者など用語の定義に関する理論です。計算に必須のものから計算とリンクして暗記しましょう。
前回も例示した法人税の受取配当等の益金不算入では、完全子法人株式等、関係法人株式等、その他の株式等で益金不算入額が異なります。計算でもこの3つの株式等の区分が重要となりますので、完全子法人株式等と関係法人株式等の定義を計算対策としても覚える必要があります。
計算に直結しない各種定義の暗記は後回しにします。
(3) 手続の理論
手続の理論とは、法令の適用を受けるための要件・条件に関する理論です。消費税の簡易課税の選択や相続税の相続時精算課税の選択など、計算にも関連する理論は暗記の優先度は高いです。
法人税の受取配当等の益金不算入の例では、適用の要件として、「確定申告書に益金不算入額及びその明細の記載がある場合に限り、記載金額を限度に適用する。」と規定されています。このような計算で出てこない細かな手続の理論は暗記の優先順位が下がります。
私が考える理論暗記の優先順位を◎、〇、△の順で示すと次のようになります。
2. 理論の文章構成と分解
(1) 文章構成
理論の文章構成は各項目によって少しずつ異なっていますが、次の型が基本形となっています。この型を意識して暗記した方が、アウトプットがしやすくなります。
(i) 要件・条件(「~の場合には」、「~のときは」、「~の場合において、~のときは」)
⇒ (ii) 処理内容・結論(「○○の額を、益金の額に算入する」、「○○の規定を適用する。」)
(i)の要件・条件は、誰が、何をしたという処理の前提がきます。要件・条件の個数が多い場合や記載が長くなる場合などには、「以下に該当するときは」などと外だしされることもあります。(ii)は法令に規定された処理内容、すなわち結論が書かれます。
(2) 文章の分解
まずは、(i)の要件・条件と(ii)処理内容・結論に分解します。テキストに「/」などをつけて分けるのがお勧めです。次に、要件・条件が複数ある場合には番号を付けるのが分かりやすいと思います。
法人税の長期割賦販売の例でみてみます。
緑の「/」、「①」、「②」が私がテキストに書きこんんだ箇所、オレンジの部分が、私がテキストに蛍光ペンで塗った箇所となります。
内国法人が、①長期割賦販売等に該当する資産の販売等をした場合において、その資産の販売等に係る収益の額及び費用の額につき、その目的物又は役務の引渡し又は提供の日の属する事業年度以後の各事業年度の確定した決算において②延払基準の方法により経理したときには、/その経理した収益の額及び費用の額は、その各事業年度の益金の額及び損金の額に算入する。
「~延払基準の方法により経理したときには、」までが要件・条件で、「その経理した~」からが処理内容・結論となります。
(i)の要件・条件が2つあり、要件①が「長期割賦販売等をした場合」、要件②「延払基準の方法により経理したとき」となります。
(ii)処理内容・結論が「その経理した収益の額及び費用の額は、その各事業年度の益金の額及び損金の額に算入する。」となります。
(3) 重要な箇所の抽出
分解することによって、この規定は、要件・条件が2つあって、処理内容・結論は益金・損金算入額の取扱いであることが明確になりました。ただし、このままではまだ分量が多く、最初から全部を暗記するのは難しいです。そこで、要件・条件①、②、処理内容・結論の骨子となる部分を抽出し覚えやすくします。
この例では、
要件・条件①「長期割賦販売等をした場合」
要件・条件②「延払基準の方法により経理とき」
処理内容・結論「その経理した収益の額及び費用の額は、その各事業年度の益金の額及び損金の額に算入する。」
となります。
これだけでも、本番でもある程度の点数が取れると思います。要件と結論を簡潔に記載できるよう、まずは骨子を暗記するのが重要です。本番での時間配分を考えた時の短縮形としても有効と思います。
抽出が適切にできるかどうかは、理論の理解次第です。理論は理解が重要というのはこの点にあります。理論の理解が十分であれば重要な箇所が抽出できるはずです。予備校の講師も理論解説の講義の中で説明してくれます。
残りの部分は徐々に暗記して行けばいいと思います。理論1題1題を完璧に暗記するよりも、骨子のみでよいので暗記した理論の題数を増やすことの方が重要です。
(4) テキストが長い理由
では、なぜテキストは長い文章となっているのでしょうか?テキストでこれ以上記載を省略すると規定として不正確になったり、日本語として意味不明になったりします。長年研究した結果が現行の理マスや理サブとなっていると私は理解しています。
3. 小見出しの暗記とアウトプット
理論はアウトプットにより、本当に暗記ができているか確認する必要があります。前回、理論の小見出しを覚えた方がいいと書きましたが、アウトプットのときには、頭から理論を書くのではなく、小見出しを書いてから内容を書くのが良いのではないかと思います。手書きだと分量を考えながら間隔を空けて小見出しを書くのは難しいですが、PCなら間に文字が挿入できるので簡単です。特に、PCの操作に慣れている社会人にはPCでのアウトプットがお勧めです。手も痛くなりません。注意点は、漢字が覚えられないということです。答練では解答用紙に解答を記載して漢字の確認もしましょう。
例えば、前回も例に出した相続税の債務控除の理論では、以下のように小見出しを先に書いて枠を作ってから、中身の理論を埋めていきます。上記1.や2.で記載したような重要な部分からアウトプットできればいいです。
1.債務控除
(1)無制限納税義務者等
(2)制限納税義務者
2.控除が認められない債務
3.控除すべき債務
(1)確実な債務
(2)公租公課
(3)国外転出時等
4. 暗記方法の比較
理論暗記の方法についてはいくつか選択肢があります。私なりに比較してみました。
理論暗記は、机の前でなくてもでき、隙間時間も活用できます。
私は外で勉強するのは好きではなかったので基本的に自宅学習でした。理論の学習は、PCを使ってのアウトプットを中心にしていました。暗記が進んできたら黙読・暗唱も組み合わせて時間短縮を図り、このときは家の中を歩き回ったりしていました。五感を刺激しながらの方が暗記の効率があがるとも言われていますので、色々と試してご自身に合った方法を見つけてください。
今回はここまでとなります。
よろしくお願いします。