こんにちは、T-アレックスです。
このブログでは、社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報をお伝えします。
2023年の税理士試験が8/8~10に実施されました。受験された皆様お疲れ様でした。
昨年もこちらの記事で試験の感想を書いています。簿記論と財務諸表論の試験問題の感想はこちらの記事で書きました。今回は税法科目の試験問題の感想を書きます。
理論と計算は問題の質(「良」、「妥当」、「悪」)と量(多すぎ、妥当、少なすぎ)、全体の資格試験としての適切性の感想を★~★★★(「不適」、「いまいち」、「適切」)の3段階で書きます。
1. 消費税
理論が事例問題で大問2題、計算はいずれも原則課税の総合問題2題という形式でした。理論は例年通りですが、計算は2題形式の場合、原則+簡易または総合+個別というのがこれまでのパターンでしたので、原則課税の総合問題2題という形式に戸惑ったかもしれません。
予備校 |
ボーダー |
確実 |
T |
70 |
79 |
O |
73⇒73 |
84⇒79 |
(1) 難易度
理論は問1、問2ともに消費税の試験で良く出てくるタイプの事例問題で難易度は「やや易」といった感じでしょうか。理論の暗記に基づく事例への当てはめが問われており、高い精度が求められます。べた書きでない標準的な事例問題は実力差が出やすく差がつきやすい問題と思います。しっかりと学習した受験生は高得点が取れる一方、暗記があいまいであったり、事例への当てはめの訓練が不十分であったりすると思ったより点数が伸びません。税理士試験の事例問題は消費税に限らず一般的に良問が多いと思います。
計算は、問1が調剤薬局、通所介護施設等を運営する法人の問題、問2が不動産業を営む法人の問題でした。問1はなじみのない業種で判断が難しい問題も含まれていたようですが、全体的な難易度は標準的だったようです。問2は頻出の不動産業業で易しい部類だったようです。
(2) 分量
理論単体で見れば理論の分量は適切だと思います。計算の分量は多いのではないかと思います。2問構成の場合、問題の前提を読んで理解するのに時間を取られます。個々の処理はそれほど難しくなかったとしても、思ったより時間がかかります。いろいろ試験で問いたいという試験委員の意図は理解できますが、ちょっと欲張りすぎではないでしょうか。
全体を通すとかなり時間配分とスピードが重要で、理論も書きすぎると計算の時間がなくなり、計算も問1と問2をバランスよく解答することが求められています。分量の点ではテストのためのテストといった感じで個人的には評価できません。
(3) 総合評価
【理論】
問題の質:良
問題の量:適切
【計算】
問題の質:良
問題の量:多すぎ
【全体】★★(いまいち)
試験問題の質は理論・計算ともに奇抜な問題や題意の読み取りが難しい問題もなく良かったのではないかと思います。実力通りの結果となりやすい試験問題だったと思います。
とはいえ、計算の量が多いため全体の分量が多すぎて少しバランスを欠いています。もう少し分量の調整ができていれば、もっと良い試験となったのではないかと思います。
2. 法人税
理論が事例問題で3題、計算は総合問題と個別問題の2題という形式でした。
予備校 |
ボーダー |
確実 |
T |
64 |
78 |
O |
58⇒58 |
70⇒67 |
(2) 難易度
理論は、問1「通算制度」、問2「過大支払利子税制」、問3「貸倒引当金(個別評価)及び貸倒損失」でいずれも事例問題でした。問われ方自体は規定とその当てはめで標準的でした。問3は標準的な論点なので高得点が求められそうです。一方、問1・問2は今年の予備校の理論のランクは分かりませんが、精度高く学習していた受験生はそれほど多くないと思います。答練で一度出題された程度ではなかなか記憶は定着しません。理論の難易度は「難」だったと思います。理論のボーダーはTが34点、Oが24点と割れています。
計算は、奇問はなかったようで難易度は「標準」だったようです。
(2) 分量
分量は理論も計算も多すぎるのではないかと思います。理論は答えが分かっていてもまともに書いていては時間が足りなくなります。いかに、減点覚悟で割り切って端折っていくかがカギとなっています。計算は例年ボリュームが多いのですが、理論と合わせるとより今年の厳しさを感じます。理論ができる受験生が書きすぎて失敗する可能性がある試験問題と思います。
問題の取捨選択やいかに回答を端折るかが合格のカギを握るような問題は、私は良い試験問題とは思いません。全体のバランを考えて分量を調節してもらいたいです。
(3) 総合評価
【理論】
問題の質:妥当
問題の量:多すぎ
【計算】
問題の質:妥当
問題の量:多すぎ
【全体】★(不適)
それぞれの問題を見ると試験問題の質は妥当に思えます。理論も計算も量が多いため全体の分量が多すぎ、スピードと時間配分の勝負となっています。時間配分を間違えるとかなりの確率で不合格となるのではないでしょうか。実力者が不合格となる可能性が高い試験問題と思います。税理士となるために必要な知識や思考力を確認する前に、時間配分が重要となってしまっている点が残念です。
3. 相続税
理論が事例問題で2題、計算は総合問題1題という形式でした。
特徴的なことは、問1が「特定居住用宅地等」、問2が「個人とみなされる者」で第68回(平成30年、2018年)の理論と同じ組み合わせで、問2は第71回(令和3年、2021年)にも出題されていることです。直近の出題にかかわらず満遍なく学習すべきとのメッセージに見えます。
予備校 |
ボーダー |
確実 |
T |
54 |
69 |
O |
64⇒59 |
76⇒71 |
(1) 難易度
理論はいずれも事例形式で資料の読み取りに時間がかかるようで、難易度は「やや難~難」でしょうか。問1は計算でも出てくる論点なので高い精度の解答が必要である一方、問2は計算との関連はなく、また直近に出題された論点であるため手薄であった受験生も多いのではないかと思います。上位の受験生はこれも押さえてくるため問1と計算が出来ていることは当然として、問2で差がついたのではないと思います。事例問題としての問われ方自体は標準的で良い問題だと思います。
計算は、財産評価が中心で難しいものも含まれており難易度は「やや難~難」といったところでしょうか。あまり細かい論点を出題しなくても良いのではないかと思いますが、問題の質は妥当に思います。
(2) 分量
理論の分量はべた書きよりは事例問題の方が問題の読み取りに時間がかかるため同じ大問2題構成といっても分量が多めとなります。
計算は個々の財産評価に難しい問題があった分、分量は抑えられているようです。
理論で時間が掛かることを考慮すると全体の分量のバランスは良かったのではないかと思います。
(3) 総合評価
【理論】
問題の質:良
問題の量:妥当
【計算】
問題の質:妥当
問題の量:妥当
【全体】★★★(適切)
計算問題でやや細かい問題を出しすぎている印象はありますが、全体的な問題の質は良好で全体の分量のバランスがとれており良い試験問題だったと思います。理論の問1と計算問題で他の受験生同様にしっかりと得点し、理論の問2でも得点できた受験生が合格するでしょう。捨てる論点なくしっかりと学習することの重要さが分かる試験問題だったと思います。
4. 国税徴収法
べた書き4題、べた書き+趣旨が1題、事例問題の小問3題、配当問題1問という構成でした。
予備校 |
ボーダー |
確実 |
T |
75 |
86 |
O |
64⇒80 |
77⇒86 |
(1) 難易度
べた書きや要件は基本的な問題で「易~やや易」だったと思います。「時効」に関する事例問題も予備校の講義では何度も解説や答練があったはずで「標準的」と思います。配当問題は全体的には「標準的」ですが一部解答が難しい箇所があったようです。
(2) 分量
昨年の試験ではあまりにも分量が少なく、相対試験には不向きでした。今年は問題量が例年通りとなっており、2時間で解ききれるものの大幅に余ることもなさそうな適度な分量という気がします。
(3) 総合評価
【理論】
問題の質:良
問題の量:妥当
【全体】★★★(適切)
それぞれの問題の難易度は易しめだったとはいえ、満遍なく広い範囲からの出題であったと思います。事例問題、配当問題、趣旨を問う問題など問題のバランスもとれています。分量としても2時間の試験時間としてちょうどよいものと思います。捨て論点のない国税徴収法らしく全範囲をしっかりと学習した人が合格する良い試験問題と感じました。
5. 事業税
事業税については細かく書きませんが、相変わらず理論は速記試験でひどいという印象です。計算は50点の配点となってから満点勝負ではなくなったようです。学習範囲が狭く相対試験に向かない科目なので税理士試験から外すべきと思います。
予備校 |
ボーダー |
確実 |
T |
72 |
80 |
O |
78⇒78 |
87⇒87 |
8/25にOのボーダーが修正されました。消費税、法人税、事業税は大きな修正はなく、相続税は下方修正、国税徴収法は大幅な上方修正でした。
今回はここまでとなります。参考になればうれしいです。