こんにちは、T-アレックスです。
このブログでは、社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報をお伝えします。
2024年の税理士試験が8/6~8に実施されました。受験された皆様お疲れ様でした。試験の感想を23年はこちらとこちらの記事、22年はこちらの記事を書いています。簿記論と財務諸表論の試験問題の感想はこちらの記事で書きました。今回は税法科目の試験問題の感想を書きます。
理論と計算は問題の質(「良」、「妥当」、「悪」)と量(多すぎ、妥当、少なすぎ)、全体の資格試験としての適切性の感想を★~★★★(「不適」、「いまいち」、「適切」)の3段階で書きます。(修正ボーダー更新 2024年8月31日)
1. 消費税
理論が事例問題と正誤事例問題で大問2題、計算はいずれも原則課税の総合問題2題という形式でした。理論は例年通りです。計算は2割特例の判定を含めた法人の原則課税と個人事業者の原則課税の2題という形式でした。
予備校 |
ボーダー |
確実 |
T |
65 |
77 |
O |
69⇒67 |
82⇒72 |
(1) 難易度
理論の問1は消費税の試験で良く出てくるタイプの事例問題で難易度は「やや易~標準」といった感じでしょうか。インボイス制度開始後初めての試験で、インボイス制度に関するに問題が出題されました。インボイス制度に関する過去問は存在しないのですが、改正初年度なので十分な対策をしていた受験生が多いと思います。
問2は計算で良く出てくる論点に関する事例正誤問題で難易度は「易」だと思います。
昨年の理論と同様に、理論の暗記に基づく事例への当てはめが問われており、高い精度が求められます。べた書きでない標準的な事例問題は実力差が出やすく差がつきやすい問題と思います。しっかりと学習した受験生は高得点が取れる一方、暗記があいまいであったり、事例への当てはめの訓練が不十分であったりすると思ったより点数が伸びません。
税理士試験の事例問題は消費税に限らず一般的に良問が多いと思います。
計算は、問1が2割特例の判定を含む法人の原則課税、問2が2割特例の判定を含む個人事業者の原則課税の問題でした。問1の特定新設法人の2割特例の判定は難しかったようですが、問2では原則課税が全額控除方式になっており、難易度の調整がされているようでした。計算の難易度は「標準」だったようです。
全体を通した難易度は「標準」でしょう。
(2) 分量
理論単体で見れば理論の分量は適切だと思います。計算の分量はやや多いのではないかと思います。計算が2問構成の場合、問題の前提を読んで理解するのに時間を取られます。個々の処理はそれほど難しくなかったとしても、思ったより時間がかかります。昨年に比べれば計算の分量の調整はされているように見えます。消費税は制度が複雑化しており、色々な計算問題の組み合わせが出題されるようになっています。今後もこの傾向は変わらないと思われます。計算の分量が大きく減少することはなさそうです。
全体を通すと時間配分とスピードが重要で、理論も書きすぎると計算の時間がなくなり、計算も問1と問2をバランスよく解答することが求められています。
(3) 総合評価
【理論】
問題の質:良
問題の量:適切
【計算】
問題の質:良
問題の量:適切
【全体】★★★(適切)
試験問題の質は理論・計算ともに奇抜な問題や題意の読み取りが難しい問題もなく良かったのではないかと思います。実力通りの結果となりやすい試験問題だったと思います。計算の量がやや多いとの印象はありますが、問いたい論点が多くこれ以上分量を減らすのは難しいのかもしれません。試験時間が3時間あったら丁度良い試験問題になる気がします。
2. 法人税
理論が事例問題で3題、計算は総合問題1題という形式でした。
予備校 |
ボーダー |
確実 |
T |
60 |
75 |
O |
66⇒64 |
80⇒76 |
(1) 難易度
理論は、問1「留保金課税」、問2「災害により所有資産が損傷等した 際の主な取扱い」、問3「仮装経理に基づく過大申告」でいずれも事例問題でした。問われ方自体は規定とその当てめで標準的でした。難易度は問1が「標準」、問2が「標準~やや難」、問3は理論を暗記していない受験生も多そうなので「やや難」といったところでしょうか。災害については各税法で頻出の論点となっています。問3は学習が後回しとなる論点ですが、理論全体としては奇抜な問題もなく良問といっていいと思います。問1と問2でしっかりと点数を確保し、問3は部分点を確保できたかどうかがポイントだったようです。
計算は、奇問はなかったようで難易度は「やや易~標準」だったようです。
(2) 分量
分量については、理論の分量が多いのではないかと思います。理論は答えが分かっていてもまともに書いていては時間が足りなくなります。いかに、減点覚悟で割り切って端折っていくかがカギとなっています。計算は例年ボリュームが多いのですが、理論と合わせるとより今年も例年通りの厳しさを感じます。理論ができる受験生が書きすぎて失敗する可能性がある試験問題と思います。
問題の取捨選択やいかに回答を端折るかが合格のカギを握るような問題は、私は良い試験問題とは思いません。全体のバランを考えて分量を調節してもらいたいです。
(3) 総合評価
【理論】
問題の質:良
問題の量:多すぎ
【計算】
問題の質:良
問題の量:妥当
【全体】★★(いまいち)
それぞれの問題を見ると今年の試験問題の質は良いように思えます。計算の分量は昨年より少なくなったものの、理論の量が多いため全体の分量が多すぎスピードと時間配分の勝負となっています。時間配分を間違えるとかなりの確率で不合格となるのではないでしょうか。とはいえ、理論の問題の質が昨年より良いため、今年の問題は実力通りに合格する可能性が高い試験問題と思います。それでもまだ、税理士となるために必要な知識や思考力を確認する前に、時間配分が重要となってしまっている点が残念です。
3. 相続税
理論が事例問題で2題、計算は総合問題1題という形式でした。
問1が「贈与税の配偶者控除」、問2が「個人とみなされる者」でいずれも事例問題でした。問2の個人とみなされる者」については、第68回(平成30年、2018年)、第71回(令和3年、2021年)と昨年第73回(平成5年、2023年)にも出題されていいます。計算ではあまり出てこない論点でかつ、公益財団法人や持ち分の定めのない法人は一般にはなじみがないですが、相続税・贈与税の観点では租税回避に用いられやすく重要な論点であるとのメッセージに思えます。
予備校 |
ボーダー |
確実 |
T |
70 |
84 |
O |
71⇒68 |
81⇒78 |
(1) 難易度
理論はいずれも事例形式で、難易度は「標準」でしょうか。事例問題としての問われ方自体は標準的で良い問題だと思います。理論の暗記に基づく事例への当てはめが問われており、高い精度が求められます。べた書きでない標準的な事例問題は実力差が出やすく差がつきやすい問題と思います。しっかりと学習した受験生は高得点が取れる一方、暗記があいまいであったり、事例への当てはめの訓練が不十分であったりすると思ったより点数が伸びません。
計算は、最初に解答する相続人の判定に迷うところがあったようです。土地の評価に一部難しい問題があったものの、計算の難易度は「標準」だったようです。理論と計算を合わせた全体としての難易度は「標準」といえるでしょう。
(2) 分量
理論の分量はべた書きよりは事例問題の方が問題の読み取りに時間がかかるため同じ大問2題構成といっても分量が多めとなります。
計算は分量は抑えられており、納付税額まで計算することも可能でした。
理論で時間が掛かることを考慮すると全体の分量のバランスは良かったのではないかと思います。
(3) 総合評価
【理論】
問題の質:良
問題の量:妥当
【計算】
問題の質:良
問題の量:良
【全体】★★★(適切)
全体的な問題の質は良好で全体の分量のバランスがとれており良い試験問題だったと思います。理論も計算も奇問はなく差がつく問題だったと思います。実力通りの結果になるのではないかと思います。
4. 国税徴収法
第1問の問1(1)が趣旨、2)がべた書き、問2(1)がべた書き+相違点、(2)が事例に基づくべたがき、問3の(1)と(2)が配当問題、第2問が事例問題という構成でした。
予備校 |
ボーダー |
確実 |
T |
75 |
85 |
O |
66⇒63 |
79⇒70 |
(1) 難易度
第1問は基本的な問題も多く難易度自体は「標準」だったと思います。分量は多かったので個々の問題は難しくなくても、精度の高い解答をするのは難しかったかもしれません。
第2問は第二次納税義務にかかる難解な論点が出題されており難易度は「難」でした。全体を通した難易度は「やや難~難」でしょう。
(2) 分量
一昨年(72回、2022年)の試験ではあまりにも分量が少なく、相対試験には不向きでした。昨年(73回、2023年)は適度な分量でした。今年は例年に比べてかなり分量が多いという印象です。国税徴収法としては珍しく2時間で解ききれない分量でした。
(3) 総合評価
【理論】
問題の質:妥当
問題の量:多すぎ
【全体】★★(いまいち)
満遍なく広い範囲からの出題であったと思います。事例問題、配当問題、趣旨を問う問題など問題のバランスもとれています。ただ、今年の試験問題は分量が多すぎると思います。このくらい分量が多くなると、解答をどう省略するかが合否のポイントとなってきます。法人税、所得税、相続税など解答ボリュームの多い税法科目の合格者の方が有利な試験だったと思います。一部の問題の解答を書きすぎて他の問題の解答時間が少なくなってしまった受験生もいたかもしれません。私は、速記試験となってしまう試験問題は資格試験として適していないと思います。
5. 事業税
事業税については細かく書きませんが、第1問の問1が「難」、問2が「標準」、第二問の計算は「標準」といったところでしょうか。第1問の問1(配点30点)で得点することは難しく、第一問の問2と第二問の計算は満点勝負となっています。学習範囲が狭く差がつきにくく相対試験に向かない科目なので、税理士試験から外すべきと思います。
予備校 |
ボーダー |
確実 |
T |
60 |
65 |
O |
60⇒60 |
73⇒73 |
6. 住民税・固定資産税
住民税と固定資産税は、私は受験経験がありません。予備校の解答速報を見ると住民税の理論で一部難しい論点があることを除くと、理論・計算ともに平易で満点勝負と思います。どうしたら他の受験生との差をつけることが出来るか分かりません。何回か受験すればそのうち合格するのかもしれませんが、運頼みのような気もします。
住民税
予備校 |
ボーダー |
確実 |
T |
78 |
86 |
O |
82⇒82 |
92⇒88 |
固定資産税
予備校 |
ボーダー |
確実 |
T |
85 |
92 |
O |
82⇒82 |
88⇒88 |
7. 所得税
所得税は、私は受験経験がありません。表だけ載せておきます。
予備校 |
ボーダー |
確実 |
T |
52 |
70 |
O |
59⇒59 |
72⇒72 |
今回はここまでとなります。参考になればうれしいです。