T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

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2024年74回税理士試験の感想(簿記論・財務諸表論)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報をお伝えします。

 

2024年の税理士試験が8/6~8に実施されました。受験された皆様お疲れ様でした。これまでも、試験の感想を23年はこちらこちらの記事、22年はこちらの記事に書いています。今年の試験問題が資格試験として適切かという点について個人的な意見を書きたいと思います。理論と計算は問題の質(「良」、「妥当」、「悪」)と量(多すぎ、妥当、少なすぎ)、全体の資格試験としての適切性の感想を★~★★★(「不適」、「いまいち」、「適切」)の3段階で書きます。(修正ボーダー更新 2024年8月31日)

 

1. 簿記論

今年も個別論点の大問2題と総合問題1題という形式でした。第一問が退職給付会計とその他有価証券に関する連結決算、第二問が有形固定資産と新株予約権に分かれているので個別論点4題となっています。

 

予備校

ボーダー

確実

T

52

65

O

52⇒53

61⇒62

 

(1) 難易度

第一問の退職給付会計は給付算定式基準や期間定額基準といった見慣れない用語が出てきており初見では難しかったようです。難易度は「難」と思います。連結決算も見慣れない問題で、難易度は「難」だと思います。

第二問の有形固定資産は「やや易~標準」といった難易度で、個別問題の中では絶対に落とせない問題でした。新株予約権は自己新株予約権の処理を問う問題でした。見慣れない論点で難易度は「難」と思います。

第三問は例年通り決算整理型の総合問題で分量は多めだったものの難易度は「標準」と思います。

 

(2) 分量

全体的に第一問、第二問、第三問全て、資料の分量が多く、例年通り、時間内では解ききることができません。問題の取捨選択がカギとなっています。

 

(3) 総合評価

【計算】

問題の質:妥当

問題の量:多すぎ

【全体】★★(いまいち)

 

例年通り、問題の取捨選択をして素早く解答することが求められています。今年は問題によって解答の難易度が異なり、とりわけ素読みと時間配分が重要でした。第二問の有形固定資産から解き始めて確実に点数を確保するというのがベストでした。第一問から解き始めた場合には、難しい問題だと早々に見切りをつけて部分点狙い切り替え第一問にあまり時間を使わず、第二問、第三問に時間を使う必要がありました。

本番の試験で問題の取捨選択をするには、自分が分からない問題は他の人も分からないと自信をもって飛ばせるだけの実力が必要です。番形式の答練で問題の取捨選択をする能力を磨いておく必要があります。今回の試験問題が資格試験の問題として優れているどうかは別として、従来の試験の傾向に沿ったものなので実力通りの結果となるのではないかと思います。

問題自体の質については、問題間で難易度のばらつきが大きいと思いますが、標準的な問題も多く、全体的には「妥当」な範囲内と思います。

問題の量については、試験時間に対する問題量の多さは依然として問題だと思います。問題の取捨選択というテストのテクニックは税理士に必要な知識や能力とは無関係で、資格試験としての質は低いと思います。難しい問題に少しでも時間を使ったら不合格になるというのは納得感がありません。問題間の難易度と分量を調整して、2時間で解ききれる分量にすべきです。

全体的な試験問題の質は3段階(★★★「適切」、★★「いまいち」、★「不適」)で「いまいち」というのが個人的な評価です。第一問、第二問の難易度がもう少し調整されているか、または、分量がもう少し調整されていれば「適切」だったと思います。

 

2. 財務諸表論

予備校

ボーダー

確実

T

46

55

O

49⇒49

57⇒57

 

今年も理論2題と総合問題での計算1題という形式でした。理論は第一問が概念フレームワーク棚卸資産、第二問が社債とのれんに分かれており理論は4論点の出題がありました。

 

(1) 難易度

理論の第一問の問1は概念フレームワークの意思決定の有用性でした。概念フレームワークは近年頻出の論点です。用語と選択肢の問題は基本的であったものの、記述まで解答できた人は少ないのではないかと思います。難易度は用語と選択肢が「やや易~標準」、記述が「難」と思います。棚卸資産については、穴埋めなどは基本的な問題で「やや易~標準」、記述も標準的な論点で「標準」ではなでしょうか。

第二問の社債については、社債発行差金は2006の改正で繰延資産から債権額からの直接控除に変更になったはずです。(私の記憶が正しければ。)私が簿記の学習を始めたときはちょうどその改正があった時ですので、繰延資産と利息法との違いを私は記憶しています。改正から18年も経過しているので今の受験生が知らないのも無理はありません。難易度は「難」でしょう。あまりにも古い論点を出すのは適切ではないと思います。

第二問ののれんについては、負ののれんは解答しづらいところもありそうですが「標準」の難易度と思います。

第三問の計算は、難易度自体は「標準」だったと思います。だた、分量が例年よりかなり多かったようです。

 

(2) 分量

今年の試験は計算の分量が多かったのが特徴です。ネットでの書き込みを見ていると答練や公開模試の成績上位者でも100分掛けても解ききれなかったようです。また、理論も4題に分かれている上に、記述がそれなりにあり分量が多い印象です。全体として分量は多かったと思います。

 

(3) 総合評価

【理論】

問題の質:妥当

問題の量:多すぎ

【計算】

問題の質:妥当

問題の量:多すぎ

【全体】★★(いまいち)

 

今年の税務諸表論の試験問題は従来以上に理論と計算の時間配分がカギとなったのではないでしょうか。多くの受験生は、理論と計算のどちらを先に手を付けるかどうかはともかく、計算に80-90分程度配分するよう事前に戦略を立てていたと思います。理論から始めた受験生は、理論の分量も多くどの程度理論を捨てて計算の時間を確保するのかを判断するのは難しかったと思います。逆に、計算から始めた受験生は例年以上に計算に時間を費やして理論の時間が足りなくなったのではないかと思います。

私は簿記論でも書きましたが、問題の取捨選択や時間配分で合否が左右されるテストは資格試験として適していないと思います。

とはいえ、簿記論と同様に、来の試験の傾向に沿ったものなので実力通りの結果となるのではないかと思います。

 

税法の試験の感想は別途書きたいと思います。今回はここまでとなります。参考になればうれしいです。