T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報を発信しています。金融関係の仕事をしながら官報合格済み。その他キャリアや英語学習の情報も発信しています。

2022年税理士試験問題の感想

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報をお伝えします。

 

2022年の税理士試験が8/2~4に実施されました。受験された皆様お疲れ様でした。

予備校の解答速報を見ながら各科目の感想を書きます。自分で問題を解いたものではないのでその点ご理解下さい。

 

税理士試験には私は色々問題があると思います。税理士試験の問題については、これらの記事で書きました。

ここが変だよ税理士試験(試験全般編) - T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

ここが変だよ税理士試験(計算問題編) - T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

ここが変だよ税理士試験(理論問題編) - T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

今年の試験も大きな傾向は変わっていないようですが、受験生を悩ませるような大きな問題の不備もなかったようですし、全体的には実力通りの結果となりやすい試験内容だったのではないでしょうか。

 

科目ごとの感想を、理論と計算は問題の量(多すぎ、妥当、少なすぎ)と質(良、妥当、悪)、全体の資格試験としての適切性の感想を★~★★★の3段階で書きたいと思います。Oの修正合格ラインを追記しました。

 

1. 簿記論

予備校

ボーダー

確実

T

55

64

O

64⇒60

72⇒68

【計算】

問題の量:多すぎ

問題の質:妥当

【全体】★★

 

簿記論については、今年も問題量が多く、問題の取捨選択が重要となったようです。計算編の問題点はそのままのようです。

第一問、第二問はキャッシュフロー計算書の問題が難しかったようですが、第二問は易しかったようです。今年も、第一問、第二問で適切に問題の取捨選択をして、第三問で出来るところを拾うという戦略となりました。

問題の質は、難問や易問に偏っているものではなく妥当であったように感じます。

予備校のボーダーの予想も極端な低得点や高得点となってはおらず、実力通りの結果となるのではないでしょうか。

私は、この問題であれば3時間は試験時間があった方が実力通りの結果が出やすく、資格試験としてより良い試験になると思います。

 

2. 財務諸表論

予備校

ボーダー

確実

T

49

58

O

50⇒54

60⇒60

 

【理論】

問題の量:妥当

問題の質:悪

【計算】

問題の量:多すぎ

問題の質:妥当

【全体】★

 

財務諸表論 の理論問題は、例年空欄補充や選択が多く、会計理論の理解を問う問題になっていないと感じます。特に今年の理論問題は酷かったように感じます。

今回の計算は従来とは異なり分量が多くなったようです。結果的に、簿記論と同様に問題の取捨選択がカギとなったようです。

理論問題の質の低さからとても空欄補充と選択、計算に偏重したとてもバランスの悪い試験問題となっているように感じます。

私は、今年の財務諸表論の問題は資格試験として適切な問題であるとは思いませんが、予備校の解答速報を見る限り、解答できる箇所とできない箇所ははっきりしているようですので、実力通りの結果になるのではないでしょうか。

 

3. 法人税法

 

ボーダー

確実

T

64

76

O

56⇒56

69⇒65

 

【理論】

問題の量:多すぎ

問題の質:良

【計算】

問題の量:妥当

問題の質:妥当

【全体】★★★

法人税の理論問題は事例問題が多く、他の科目と比べ例年質が高いと私は思います。今回も事例問題が2題出題され、問題の質は良かったのではないかと思います。とはいえ、解答量は多くなり計算の時間も考えると問題の質・量に比して十分は解答時間が与えられていません。

計算問題については、若干量が多く、当期の月数が9月であったり減価償却が複雑であったりして、時間が掛かる問題であったようですが、総じて妥当な計算問題であったとの感想です。

全体として実力通りの結果となる試験だったのではないでしょうか。ただし、この試験問題の質・量であれば試験時間は3時間はあった方がより実力が反映されると思います。

 

4. 相続税法

予備校

ボーダー

確実

T

68

80

O

68⇒66

78⇒75

 

【理論】

問題の量:多すぎ

問題の質:妥当

【計算】

問題の量:多すぎ

問題の質:妥当

【全体】★★★

 

相続税の理論問題は、事例問題での贈与財産と非上場株式の2題でした。趣旨を問う問題もあり良問だったのではないかと思います。しっかり学習した人は高得点が狙え、差がつきそうな問題だと感じました。

べた書き部分の解答が多くなりがちなことと、今回は解答用紙のスペースから解答範囲に迷いそうなことから、もうすこし解答時間があったほうがいいのではないかと思います。

計算問題は、例年ボリュームが多く解ききれないです。今年もそれなりにボリュームが多かったようです。問題の難易度はそれほどでもないようで、解答スピードと取捨選択がカギとなったようです。

全体として、今年の問題は総じて妥当で実力通りの結果となる試験だったのではないでしょうか。ただし、この試験問題の質・量であれば試験時間は3時間はあった方がより実力が反映されると思います。

 

5. 消費税法

 

ボーダー

確実

T

62

70

O

67⇒65

76⇒70

 

【理論】

問題の量:少なすぎ

問題の質:悪

【計算】

問題の量:多すぎ

問題の質:難しすぎ

【全体】★

 

今回の消費税の試験問題は理論と計算のバランスが悪すぎると感じます。

理論問題は、問1はべた書き2題、問2は例年通りの事例問題5題でした。問1(2)の価格表示義務については解答の精度が低い人が多いかもしれませんが、それ以外は平易で高得点勝負となったようです。消費税は受験生が多くこのような問題でも差がつくのかもしれませんが、もう少し問題に工夫がほしいところです。

計算問題は、近年よく出題される「原則課税」と「簡易課税」の2題形式でした。納税義務の有無の判定に時間をとられる問題となっており、受験生には非常に難しいと感じたでしょう。問題量も多すぎると思います。問題作成者が受験生に問いたいことを詰め込み過ぎた印象で、結果的に問題の取捨選択の勝負になりそうで残念です。

とはいえ、例年の問題傾向から大きく外れるものもなく、個々の問題では奇問はなかったようなので、全体として実力通りの結果となるのではないかと思います。

今年の消費税の試験問題は、理論と問題の配分の調整、試験時間と問題の量・難易度の調整が必要であったと思います。

 

6. 国税徴収法

予備校

ボーダー

確実

T

87

95

O

83⇒83

91⇒91

 

【理論】

問題の量:少なすぎ

問題の質:悪

【全体】★

 

私は、国税徴収法の受験をお勧めしてきました。詳細はこちらを見ていただきのですが、国税徴収法は本番の試験の出題範囲が広く、横断的な問題、事例問題や趣旨を問う問題も多く出題され、満点勝負になりにくいです。それにもかかわらず、試験の分量が適切で速記試験になりづらく、受験生の数がそれなりに多いこともあり、実力通りの結果となりやすいからです。

今回の試験問題にはがっかりしました。第1問は「督促を要しない国税の差押え」と「滞納処分の停止」の2題でした。いずれも基本の個別論点のべた書きです。解答の柱を考える必要もなく満点勝負です。

第2問は第二次納税義務に関する事例問題3題です。例年良く出題される形式の事例問題でこの問題の質自体は標準的だと思います。きちんと学習した人はかなりの高得点を取ることができると思います。

今年の国税徴収法の試験問題の問題点は、何といっても問題の量が少なすぎることです。早い人は1時間ぐらいで終わってしまったのではないでしょうか。問題の質としても横断的な問題も配当問題もなく平易だと思います。絶対評価の試験であればこれでも良いと思いますが、相対試験としては適切ではないと思います。

自己採点で高得点だったとしても他の受験生も高得点を取っていることが想定され、安心できないのではないでしょうか。

私が見た今年の税理士試験の中では最悪の試験問題と思います。

 

7. 事業税

予備校

ボーダー

確実

T

68

75

O

68⇒68

82⇒82

 

【理論】

問題の量:多すぎ

問題の質:妥当

【計算】

問題の量:多すぎ

問題の質:妥当

【全体】★★

 

私は、事業税はこちらに記載したとおりお勧めしない科目なのですが、受験経験があるので今年の試験問題についてコメントします。

理論の第一問の問1では「所得税の所得計算の例によらないもの」と「各種の控除」に係る個別問題が出題されています。内容的にはべた書きなのですが、全部書こうとすると時間がなくなるため解答範囲の取捨選択と速記力が試されるものとなっています。この点は例年と変わっていません。問2は「延滞金」に係る横断的な事例問題で少し難易度が高かったようです。

計算は2題形式で分量はそれなりに多いという印象です。内容も昔より難しくなっており1ミスで終わりとの印象はありません。他の科目の計算と同様に問題の取捨選択が重要となっているようです。

理論と計算が50点-50点となったことにより、以前よりは速記と計算の満点勝負の要素が減っているのではないかと思います。受験者数が少ないので実力通りの結果となるのか未知数なところはあります。

 

今回はここまでとなります。