こんにちは、T-アレックスです。
このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。
今回は税法の趣旨を問う問題についてのお話です。
1. 過去問の調査結果
以前の記事で、税法では趣旨や理由を問う問題が出題されることがあるのでその対応が必要と書きました。
69回(2019年)から国税庁が試験問題を公表しているので、どのくらい趣旨や理由を問う問題が出題されているか調べてみました。調査の対象は税法9科目×3年分(69回から71回)の27科目です。
私が調べたところ、11/27(40%)科目で計18題出題されています。私は結構な頻度で趣旨や理由を問う問題が出題されているという印象を持ちました。サンプル数が少ないですが、相続税とミニ税法で趣旨や理由を問う問題が出題される可能性が高そうです。
【過去問】
〇 第71回(2021年)
・相続税法 第一問 問2
Aの行った事業資金の贈与に関し、どのような贈与税の課税関係が考えられるか、関連する条文とその趣旨に触れつつ説明しなさい。
・酒税法 第一問 問2
(1)酒類の販売業に免許制度が採用されている趣旨を説明するとともに、
(2)酒場、料理店その他酒類をもっぱら自己の営業場において飲用に供する業については、 酒類の販売業免許を要しないこととされているが、その趣旨について説明しなさい。
第一問 問2 (1)不動産等のうち、次の財産の公売における売却決定の日が、公売をする日と異なる日とされている理由について簡単に説明しなさい。
第二問 問1(1) 参加差押えをした税務署長による換価執行を定めた趣旨(理由)を説明し なさい。
・住民税 第1問 問1(1)、(2)、(3)
令和 3 年度分の個人住民税における次の制度の意義及び概要に関し、所得税における取扱いとの相違点に留意しつつ、簡潔に述べなさい。
・固定資産税 第一問
問 1 地方税法に規定されている固定資産税に関する申告制度について、その趣旨及び内容(申告の対象となる者、申告先、申告すべき事項)について説明しなさい。
問 2 土地名寄帳及び家屋名寄帳について説明した上で、固定資産税の免税点について、 その趣旨、内容及び免税点の判定方法について説明しなさい。
〇 第70回(2020年)
・相続税法 第一問
問1 (2)相続税法に特別寄与料に係る規定が設けられている理由に触れつつ、 D の相続税の課税価格及び税額の計算と申告手続について説明しなさい。
問2 代物弁済が行われたことにより、贈与税の課税が問題となる場合について、関連する条文とその趣旨に触れつつ説明しなさい。
・酒税法 第一問 問2(1)
構造改革特別区域法第27条第9項の規定の趣旨を述べなさい。
・国税徴収法 第一問
(1)不動産等の公売において、「 最高入札価額に次ぐ高い価額による入札者から次順位によ る買受けの申込みがあるときは、その者を次順位買受申込者として定めなければならない」とされている趣旨(理由)を説明し なさ い。
(2)不動産等の公売において、最高価申込者の場合と異なり、次順位買受申込者を本人の申込制としている理由を説明しなさい。
〇 第69回(2019年)
・消費税法 第一問 問1(1)ロ
輸出免税制度が採用されている理由について、国境を越えて行われる取引に係る消費税の課税の考え方に触れつつ、簡潔に述べなさい。
・酒税法 第一問 問1
酒税法第 29 条の輸出免税の規定が設けられている趣旨について述べるとともに、輸出酒類販売場から移出する酒類に係る酒税の免税について、制度が設けられた趣旨、制度の概要及び酒税の免除の対象となる酒類の要件について述べなさい。
・住民税 第一問 問1①
個人住民税の所得控除制度の趣旨及び概要(所得税と取扱いが異なる点については重点的 に言及すること。
2. 制度趣旨とは?
税理士試験で問われる制度趣旨とは何でしょうか?予備校の講義では趣旨や理由はある程度作文でもいいと指導されますが、個人の意見を自由に書くものではありません。そのような制度が制定された理由・背景について、財務省・国税庁の公式見解に沿った解答をする必要があります。
では、公式見解はどうやって把握することができるのでしょうか?
まずは、税制改正の流れについて簡単に説明します。
8月頃:各省庁が業界団体等から税制改正に関する要望を取りまとめ、財務省・総務省に提出
12月中旬:与党が「税制改正大綱」を発表
12月下旬:与党の「税制改正大綱」をベースに、政府が「税制改正の大綱」を発表
2~3月:国会での審議・決議
4月:改正法令の施行
財務省は税制改正にあたり、改正の内容や概要とともに、改正に至る議論の内容や改正の趣旨・目的などを「税制改正の解説」にまとめて公表しています。税制改正の解説に記載された改正の趣旨や目的が財務省の公式見解となります。税理士試験でもこの公式見解に沿った解答をする必要があります。
税制改正の解説は、分量は多いものの記載は難解ではなく、普通に読んで理解できると思います。
予備校のテキストには、ここから重要な部分が抜粋され記載されています。
ご自身の受験科目の改正論点については、財務省の税制改正の解説を読むのもいいと思います。改正論点は1科目で2~3個と思いますし、分量は多いですが予備校のテキストより詳しく記載されているので記憶に残りやすいと思います。
3. 趣旨の出題の目的
税理士試験でなぜ趣旨を問う問題が出題されるのでしょうか?
税法は様々な社会の変化に応じて変わっていき、複雑でなぜそのような規定が定められているのか条文を読んだけではその規定がなぜ必要なのか理解が難しいものもあります。
税理士は、単に法令の規定通りに税務処理ができるだけでなく、規定が制定された理由や趣旨を理解し、これを顧客や社内の関係者などに説明し納得してもらうことも重要となります。私は、これが税理士試験の税法の試験で制度趣旨が問われる理由と考えています。財務諸表論の理論が税理士試験に出題される理由と同じです。単にべた書きで解答できる問題よりも、制度趣旨を含めた問題の方が税理士の適性を測る試験として良問であると私は思います。
4. 試験の合否への影響
趣旨が問われる問題は、試験問題で解答要求がされている以上、配点が必ずあると考えられます。
趣旨まで解答できる受験生はそれほど多くないと考えられ、解答することができれば頭一つ抜け出すことができると思います。趣旨については、通常の理論ほど一字一句暗記する必要はなく、キーワードと大まかな内容が合っていればある程度の点数を取ることができると思います。
以上を踏まえると、私は、法令の趣旨を含めて理論を覚えることは、追加的な労力が少なく点数を稼げるため効率が良いと考えます。また、理論の理解にも役立ちます。予備校の講義や答練で触れられたものについては、本番でも何らかの解答ができるようにしておくことをお勧めします。
今回はここまでとなります。
よろしくお願いします。