こんにちは、T-アレックスです。
このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。
今回は、日商簿記試験(主に2級)のお話です。
2. 日商簿記検定の改定
税理士試験を受験する人は日商簿記の3級、2級に合格してから、簿記論・財務諸表論に進む人が多いと思います。
私も簿記2級を合格してから簿記論の勉強を開始しました。私が合格したのは10年以上前となります。1級は税理士試験を受験中に合格しましたが、1級の話は別の機会にしたいと思います。
日本商工会議所は、試験範囲(特に2級の試験範囲の拡大)の大幅見直し(2016-2018年)、ネット試験の導入と試験時間の変更(2020年12月から)と、大きな改定を実施しています。
民間資格試験において、試験の難易度を上げるのは難しいことと思います。その資格に合格しないと業務が行えない独占資格ではなく、日商簿記検定に合格していなくても一般的な経理業務への支障はありません。また、民間資格は競合も多く、試験の難化が受験者数の減少(=受験料収入の低下)を招く恐れがあります。
日商簿記検定が簿記能力を測る検定試験として広く認められているからこそ、このような改革ができたのではないかと思います。私は、日商簿記検定試験を社会のニーズに合わせて改善し、日商簿記検定合格の価値の維持や向上を図ろうとする日本商工会議所の意思を感じます。国税庁も見習って、何十年も変化の乏しい税理士試験の改革をして欲しいものです。
2. 日商簿記3級
日商簿記3級は、日本商工会議所のサイトでは「基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベル。」と記載されています。商業簿記の基本的な事項からの出題で、大問3問で60分の試験となっています。
簿記の勉強を開始する人はほとんどの人が日商簿記3級から始めることになるでしょう。試験範囲は毎年細かく改定され、問題数が大問5問から3問、試験時間が120分から60分に変更となっていますが、難易度はあまり変化がない印象です。
以前は年3回のペーパー試験のみでしたので、3級と2級の試験を両方申し込み、2級の勉強が順調な場合には、3級を受けない人も多かったではないかと思います。私も3級は受けませんでした。
今は、ネット試験で受験機会が多いので、3級の勉強が終了したらすぐに受験してもいいのではないかと思います。
3. 日商簿記2級
日商簿記2級は、日本商工会議所のサイトでは「高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル。」と記載されています。
問題数は大問5題(商業簿記3問60点、工業簿記2問40点)、試験時間は90分です。
(1) 工業簿記
工業簿記は2級から試験範囲となります。2級の工業簿記は難しくはなく、満点(40点)も狙える得点源です。工業簿記は大きな試験範囲の改定はなく、試験の難易度は変化していないようです。
工業簿記は税理士試験の簿記論の試験範囲ではありません。
税理士試験においては簿記論、財務諸表論、法人税、所得税、相続税、消費税などは計算問題の試験範囲が広範となります。工業簿記の勉強は、税理士試験の計算問題への対応準備の一環と考えましょう。
(2) 商業簿記
2級の商業簿記は、税理士試験の簿記論と試験範囲が重なりますので税理士試験の受験者には必須です。
平成28-30年(2016-18年)の改定で大幅に試験範囲が変更となりました。
【主な追加項目】
・クレジット売掛金
・圧縮記帳
・ソフトウェア
・子会社株式、関係会社株式、その他有価証券
・リース取引
・外貨建取引
・連結会計
【主な除外項目】
・特殊商品売買
・繰延資産
・社債
連結会計以外は個々の会計処理を習得すればよいので試験範囲は増加していますが、やや難化したという程度でしょう。税理士試験の簿記論や財務諸表論でも頻出の項目です。
やはり厄介なのは連結会計だと思います。1級の範囲が2級に移動してきました。私は、単体会計は1企業の活動が会計的にどう表現されるかということなので、感覚的に理解しやすいと思います。連結会計は2つ以上の企業の活動を一体としてみたときに会計的にどう表現されるかということなので、感覚的に理解が難しいのではないかと思います。
また、連結の処理が単年度にとどまらず、複数年度に渡って処理しなければならない点なども難しいところだと思います。
連結会計は簿記論でも69回(2019年)と71回(2021年)でも出題されていますので、税理士試験を見据え簿記2級の段階でしっかりと勉強しておく必要がありそうです。
2級の連結会計の問題は歴史が浅いため試験問題のレベルが安定しておらず、難問が出された回もあるようですが、徐々に安定してくると思います。
連結会計は難しいとはいえ、1級のように連結会計ができなければ即不合格のような問題は出ないのではないでしょうか。工業簿記と連結以外の商業簿記で満点近い点を取り、連結会計の基礎的な問題に正解できれば、高得点で合格できると思います。
4. ネット試験
2020年12月からネット試験が導入されています。ネット試験といっても自宅で受験できるものではなく、試験会場のPCで試験を受けるものとなっています。受験日の選択日が多いことや試験結果が即時にでることなど利便性が高くなっています。
ネット試験にでは問題文に書き込みができないことや、PCと計算用紙を行ったり来たりするなどペーパー試験とは勝手が異なります。問題集に付属しているネット模擬試験などで試験の形式に慣れておいた方がいいと思います。
近い将来に税理士試験にネット試験が導入される可能性はほとんどないと思いますが、一般的には短答式の資格試験ではネット試験が拡大していくと思います。簿記検定を通じてネット試験を経験しておくのも今後の人生に有用ではないかと思います。
TACの問題集では5題のネット試験の模擬模試を受けられるようです。
今回はここまでとなります。
よろしくお願いします。