こんにちは、T-アレックスです。
このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。
今回は、税法の学習のための法律体系や通達・事例集とその学習法についてお話します。
予備校の税法の講義では、初回に法律体系などの説明があると思います。税法初学者にとっては初回の講義で全体像を理解するのは難しいのではないでしょうか?
学習がある程度進んでから改めて頭の整理をするのをお勧めします。
1. 法律体系
日本の法律体系は憲法を頂点として、おおまかに下図のようになっています。
上位の法令で概要を定め、下位の法令で詳細が定められています。
告示は、国家行政組織法14条の1「各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。」に基づき定められるものです。告示には、計算方法や書類の記載内容などの詳細が定められています。
例えば、上位の○○施行令〇条〇項の「○○庁長官が指定する××については、△△する。」などとの規定に基づき、○○庁長官の名で、「○○施行令〇条〇項に規定する××を定める件」といった告示が発せられます。
法律から告示までは広く一般向けとなっています。
2. 通達
通達は、国家行政組織法14条の2「各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達をするため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。」に基づき発せられるものです。○○庁長官等から所管の職員に対し、法令の運用に関する細かい命令や指示をするものとなります。行政機関の内部文書との位置づけで法的拘束力がありません。
国税の通達は、国税に関する法令の解釈や具体的な取り扱いについての国税庁の公式見解となります。徴収職員は公式見解である通達に基づいて徴収業務を行い、事実上の共通ルールとなっています。法的には通達は内部文書となっていますが、国税庁はHPで通達を公開しており、納税者の予測可能性を高め、通達に沿った税務処理を行うことを納税者に要請していると考えられます。
通達の内容が裁判で否認されることもあります。過去の事例については弁護士事務所のサイトに掲載されていることがありますので、興味のある方は探してみてください。
一般的に通達の発信前に内部で法的な解釈を含め十分な検討を行っていると思いますので、通達に反論するは難しく専門の弁護士の助けが必要となるでしょう。
3. 文書回答事例と質疑応答事例
上記の法令、通達以外にも国税庁は、納税者の予測可能性を高めるために、文書回答事例と質疑応答事例を国税庁のHPで公表しています。
- 文書回答事例:納税者からの個別の取引等に係る税務上の取扱いについての照会に対して、文書により回答したもの。
- 質疑応答事例:納税者からの照会に対して回答した事例等のうち、他の納税者の方々の参考となるもの。
上記1~3がまとめて掲載されているのが以下のリンクとなります。
受験生はざっと見る程度でいいと思います。
どんな仕事でも同じですが、実務では、まずは原文に当たり、公式サイトで正確な情報を把握する必要があります。
4. 国税不服審判所の裁決
国税に関する処分に不服がある場合には、裁判所に訴える前に不服申立てを行い、国税不服審判所の裁決を受ける必要があります。(詳細は国税徴収法で学習してください。)
国税不服審判所も国税庁と同様に裁決事例の要旨や全文をHPで公開しています。
裁決事例集はこちら
公表裁決事例集 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所
5. 試験範囲と学習方法
(1) 試験範囲
税理士試験の税法の試験範囲は上記1~4の全部となります。
計算においては、通達に詳細が記載されているため、通達に基づく処理まで学習することになります。
理論については、べた書きは基本的に法令のまとめとなります。事例問題は事例集や過去の裁決事例などから出題されることもあります。
(2) 学習方法
通達や事例対策のために特別な学習をする必要はあるでしょうか?私は、予備校のカリキュラムとは別に独自の学習必要はないと思います。予備校は事例集や裁決事例も研究して、本番での頻出論点や予想論点をカリキュラムに組み込んでいます。社会人は予備校のカリキュラムをこなすのが精一杯で独自学習をする余裕はないでしょう。
裁決事例全文は、いくつか読んでおくのが良いと思います。理論の解答の仕方の参考になります。但し、1つ1つが長いです。興味が引かれたものをいくつか斜め読みする程度でいいと思います。
法人税では事例問題が良く出題されますので、余裕があれば市販の書籍などで勉強するのもいいでしょう。
今回はここまでとなります。
よろしくお願いします。