こんにちは、T-アレックスです。
このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。
今回は簿記論の学習のポイントについてのお話です。
1. 試験の概要
(1) 問題構成
簿記論は大問三問の構成で配点は第一問25、第二問25、第三問50点と毎年決まった問題構成となっています。
(2) 第一問、第二問
第一問と第二問はテーマが限定された個別問題も出題されますが、簿記一巡、推定簿記、本支店会計、連結会計、キャッシュフロー計算書など総合問題形式での出題も多くなっています。
(3) 第三問
決算整理型の総合問題が出題されます。毎年出題形式は同じようです。
2. 難易度
簿記論は予備校の配点でボーダーが40点台となることがあるなど問題は難しいと思います。出題範囲は簿記2級の商業簿記と大きな差はないですが、簿記2級の合格直後に本試験問題を解いても10点ぐらいしかとれないのではないでしょうか。
単純な仕訳で正解となる問題が少なく、特に総合問題形式の問題では勘定科目間の関係を十分に理解しなければ問題が解けません。
税法の計算問題と比べると問題間の関連が強く、部分点を取るのが容易ではありません。例えば、法人税の計算問題では、減価償却と役員給与の問題は独立しており部分点が狙えます。一方で、簿記論では、売上、仕入、売上原価、棚卸資産、売掛金、買掛金、現金預金などが相互に関連しており、相互の関係を正確に理解しないと正解が出せない問題が多いです。もちろん、賞与引当金など単独で解答できる問題もあり、そのような問題は確実に正解しなければなりませんが、総合問題からそのような簡単な問題を素早く把握するのにも訓練が必要です。本番の試験で難易度別に問題に★印など付いていません。
3. 合格への戦略
(1) 目標得点と取捨選択
問題形式や問題のレベルが安定している第三問で得点を稼ぐのが定石となっています。他の受験生が正解できる箇所を確実に正解し、その年の問題の難易度にもよりますが概ね25-30点/50点が合格ラインとなっています。
問題形式や問題のレベルが年によって異なる第一問、第二問が厄介です。標準からやや難ぐらいの問題は正解しないと合格することはできませんが、難しい問題はできなくても合格できます。第一問、第二問の難易度は問題を解いてみないと判別できず、時間配分との兼ね合いもあり非常に難しいです。
(2) 時間配分と解答の順番
第三問で確実に得点をしなければならないため、第三問に60-70分の時間を掛けるのが標準的です。
解答の順番も難しいところです。
第一問・第二問から解く場合には、第一問・第二問で難しい問題が出ると時間を使った割に解答できた箇所が少なく得点が伸びないことがあります。第三問にかける時間を計算して時間を使いすぎないようにしなければなりません。
第三問は時間をかければかけるほど点数が取れそうですが、第一問・第二問のために時間をかけすぎないようにする必要があります。
どちらを先に解答するにしても、2時間では全てを解答しきることはできませんので時間配分が重要となります。
4. 簿記論への適正
私は簿記論の問題は数学の問題に似ていると思います。高度な数学が必要という意味ではありませんが、問題へのアプローチは似ていると思います。
税法の計算では、法令や通達の規定を当てはめて、A(設例)⇒A’(課税標準額)といった解答をする問題が多いです。一方、簿記論では税法のような単純に会計処理をあてはめてA(設例)⇒A’(仕訳)という問題もありますが、A(設例)から勘定科目間の関係を使ってA⇒B⇒C⇒D⇒Eと求めていく問題も多く出題されています。このような問題は、与えられた条件や定理を使って順々に解答を導き出す数学の問題に近いと思います。
また、問題の取捨選択についても見ただけでは難易度の判別が難しく、解いてみなければ判断が付かないという点でも数学に似ているのではないかと思います。
学生時代に数学に苦手意識があった人には簿記論は難しく感じるのではないでしょうか。このあたりが税法の合格者でも簿記論が長期化している人がいる要因ではないかと私は思います。
5. 学習のスケジュール
(1) 簿記2級
簿記論の学習の前にまずは日商簿記2級を取得しましょう。簿記2級の商業簿記の範囲は簿記論と被ります。工業簿記は簿記論の出題範囲ではありませんが簿記2級の工業簿記は簡単です。こちらの記事でも書きましたが、簿記2級を3カ月で取得できないようであれば税理士試験に挑戦しない方がいいと思います。
(2) 個別論点の習得
簿記2級を取得したら、予備校の講義や参考書をしようして個別の論点の学習をします。トレーニングや問題集を用いて個別論点を習得します。年内に一通りの論点の学習を完了させましょう。簿記2級を取得していれば個別論点の理解はそれほど難しくはないと思います。
(3) 問題演習
年明けからは本格的な問題演習となります。総合問題形式の問題を数多く解き、問題の取捨選択と時間配分を答習得しなければなりません。第一問・第二問から解くのか、第三問から解くのか答練を通じて自分に合った方法を見つけ、試験本番では解答順を迷ってはいけません。
私が考える簿記論の合格レベルは、自分が解けない問題は他の受験生も解けないと自信をもって正しい問題の取捨選択ができるようになることだと思います。このレベルに達すれば答練の点数は高得点で安定します。
6. 独学か予備校か
簿記論は、税理士試験の科目の中で唯一独学でも合格可能な科目と思います。
とはいえ、問題演習を数多くこなす必要があり、個別問題集と総合問題集、過去問と多くの問題集を購入することになります。初見の問題への対応力をつけることも重要です。これらを考慮すると資料通信でもよいので予備校の講座を受けた方が時間的にも費用的にも効率的なのではないかと思います。こちらの記事でも書いたとおり、予備校の選択においては演習が多いところの方が良いと思います。
私は、1年目は簿記の勉強の延長でなんとなく税理士試験を受験しており、予備校の講義を受けようとすら考えませんでした。市販の参考書、問題集、過去問で学習し結果は不合格でした。2年目も直前期までは同様の学習スタイルでしたが、演習不足を感じて直前期の資料通信を受講して演習不足を補い、2年目で合格しました。
簿記論だけで見れば2年で合格したので悪くはないのですが、1年目から予備校を活用した方が良かったのではないかと思っています。1年で簿記論を合格できなかったことでその後の税法の学習に影響があり、少しずつ合格が遅れていったのではないかと感じています。
今回はここまでとなります。
よろしくお願いします。